福祉・医療

少年行刑の歴史からみる知的障害者福祉の萌芽

少年行刑の歴史からみる知的障害者福祉の萌芽

著者:末松惠

発行年月:2022年3月

(「序章」より)
 近年、社会福祉専門職の職域は、従来の福祉分野にとどまらず、労働・教育・司法・保健医療等へと拡大されつつある。そのなかでもとりわけ、福祉分野と司法分野との連携・協同という古くて新しい課題が注目され、更生保護施策における新たな支援枠組みに関する検討がすすめられている。「古くて新しい」というのは、非行や犯罪に関わった人々の社会復帰に向けた援助は明治大正期にまで溯るのであり、これまでに、出獄人保護事業や感化事業など司法領域における福祉的な対応が模索されてきたということである。また、近代初頭の少年行刑・感化矯正のもとでなされた知的障害者処遇には、処罰にとどまらない保護的・教育的な視点がみられ、ここに知的障害者福祉の萌芽的状況をとらえることができる。しかしながら、これまでの知的障害者福祉研究では、当時の処遇に関する検討が十分になされたとはいいきれない。福祉と司法の連携・協同が模索される現在、福祉的な視点と司法的な視点とが未分化であった近代初頭の知的障害者処遇からは、いかなる示唆が得られるであろうか。本書は、こうした問題意識に依拠しつつ、近代初頭の少年監獄における知的障害者処遇の形成過程を解明することによって、知的障害者福祉研究の進展に貢献することを目的としている。

 少年監獄における知的障害者処遇を解明するにあたり、本研究では浦和監獄川越分監を取り上げる。その理由は、川越分監では、「低能者研究」「低能者特別教授」等、知的障害者に対する処遇がいちはやく実施され、ある一定の組織だったアプローチが展開されていたためである。このことは、川越分監が我が国最初の幼年者対象の監獄として設置され、監獄改良の主眼であった懲治人教育が実験的におしすすめられていたことと深く関連している。またそうした位置づけゆえに、川越分監は「先進川越」として、全国の他の少年監のモデルともされていた。これらのことから、浦和監獄川越分監が知的障害者処遇の嚆矢として、それ以降の少年行刑にも一定の影響をもたらしたことが予想される。そうした意味から、川越分監の諸実践に焦点をあて、知的障害者処遇の起点とその具体的なありようを把握していくことは知的障害者福祉の歴史研究において不可欠な作業であると考える。

私の記録、家族の記憶 ケアリーヴァーと社会的養護のこれから

私の記録、家族の記憶 ケアリーヴァーと社会的養護のこれから

著者: 阿久津 美紀

発行年月:2021年8月

「この本は、家庭での養育が難しく、社会における福祉制度の中で養育された子どもに関する記録をテーマにしています。現在、児童虐待など様々な家庭の理由により、実親を中心に構成された家庭ではなく、児童福祉施設やファミリーホーム、里親家庭、特別養子縁組などで養育される子どもが多くいます。一般的に日本では、こうした児童福祉制度について、「社会的養護」「社会的養育」「代替的養育」など様々な用語で説明されますが(本書では、社会的養護という用語を使用していく)、この本は、こうした子どものケアを中心に書いているわけではありません。あくまでも、そこで生活した子どもたちに関する「記録」を中心に扱った本です。」(「まえがき」より)

「この本は、保護者のいない児童、被虐待児など家庭環境上、養護を必要とする児童を公的な責任で養育する、「社会的養護」に関する記録や記録管理システムについて取り上げている。同時に、この社会的養護で養育された経験をもつケアリーヴァー(care leaver)と呼ばれる当事者たちが記録を探し、その記録へアクセスするために乗り越えるべき課題及びその支援の方法についても言及していく。」(「序章」より)

「劣等児」「特別学級」の思想と実践

「劣等児」「特別学級」の思想と実践

著者: 阪本 美江

発行年月:2021年5月

教育と思想、教育と政策・制度、教育と社会。その中の児童と家庭と、目の前の現実に正面から立ち向かう教師たち…。
“奈良県”から見えてきた、大正末から昭和初期日本の教育“現場”の実態を、一次資料で浮き彫りにし、課題を鮮明化する。
近代日本教育史の一隅に響く、思想と実践の相克を、丁寧にたどって見えてきたものとは…。
「劣等児(学業不振児)」のための「特別学級」は、過去の〈終った〉歴史ではない。

京都「特別学級」成立史研究―史料と論究

京都「特別学級」成立史研究―史料と論究

著者:玉村公二彦

発行:2021年2月/発売:2021年4月

「特別学級」その発想の端緒は? 設置と運営を担った人々の模索と苦闘の跡を語る、稀有な史料を一挙復刻し辿る、初の京都「特別学級」実践概史。
明治期から障害児者の教育・保護事業に先駆的に取り組んでいた地、京都――戦前戦中期に「特別学級」の設置と実践を旺盛に展開したのも京都だった。小学校・児童の「特別学級」実践と模索を跡づける、現場を担った教師や京都市関係者の残した稀少で貴重な史料を一堂に会し、その意義を確認し、後世への遺産として復刻する。

戦前日本社会事業調査資料集成 別巻(調査資料文献/概要)

戦前日本社会事業調査資料集成 別巻(調査資料文献/概要)

編者:社会福祉調査研究会

発行年月:2019年12月

戦前期(明治後半~ 1945年8月)の社会事業(社会福祉)調査資料文献約1,300点の概要をまとめた。
本書と「補巻(災害救助)」で、シリーズ『戦前日本社会事業調査資料集成』が全巻完結、1~10巻(勁草書房 1986-95)所蔵先には必備。
社会事業、福祉・慈善事業から経済・社会・思想・民衆・生活・医療・教育・地方・労働・貧困・災害等々、近代日本の「実態」を伝える〈調査〉史料を網羅的に解説、集成するシリーズ。

シリーズ福祉に生きる71 久保寺保久

シリーズ福祉に生きる71 久保寺保久

著者:高野 聡子

発行年月:2019年8月9日刊行

知的障害児入所施設「八幡(やわた)学園」を創設した久保寺保久。
既存の概念にとらわれず、園児それぞれに応じた道具や材料を用いて、彼らの発達を促した。
「踏むな 育てよ 水そゝげ」
久保寺が目指した知的障害児との接し方、そして知的障害児施設像が示された標語である。

 八幡学園が広く知られているのは、貼絵やクレパス画で一人ひとりの能力に応じた指導で特異の才能を発揮出来た学園児、特にあの「裸の大将」として知られている山下清等の一群の学園児がいた施設と言った方がわかりやすいかもしれない。その学園を創ったのが、久保寺であった。(「はじめに」より)

 この子らが伸びていった基本は「指導するよりも、まず友達として接する事、安住できる環境作り、叱らない、責めない、誉めること」という園の育成方針にありました。(久保寺光久※前園長『造形教室 回顧』、学園月報「穭穂」通巻88号より)

明治=岩手の医事維新 医師・三田俊次郎の挑戦

明治=岩手の医事維新 医師・三田俊次郎の挑戦

著者:三田 弥生

発行年月:2018年8月

三田俊次郎 1863・文久3~1942・昭和17
ここに維新を武士の魂で生き抜いた明治の意地がある。
何よりもまず“医療”に維新を!
僻遠の地に生きる人々の健康で幸福な生活を構築するために、全精力を注ぎきった明治人の生涯。

看護・保育・福祉・教職課程のためのセクシュアリティ論ノート

看護・保育・福祉・教職課程のためのセクシュアリティ論ノート

著者:益田 早苗

発行年月:2018年4月・第1刷/2020年11月・第2刷

“人間の性:ヒューマン・セクシュアリティは人間が生きる事そのものである”
対人援助の職種(看護・保育・介護・教育など)を目指すすべての人が、「セクシュアリティ」に関する「知識と介入スキル」の基本を習得するためのテキスト。永年の教授経験から生み出された事例をもとに学び、考える、実践的な書。この分野では数少ないテキスト。

絆を伝えるソーシャルワーク入門 社会福祉・児童家庭福祉・相談援助のサブテキスト(改訂版)

絆を伝えるソーシャルワーク入門 社会福祉・児童家庭福祉・相談援助のサブテキスト(改訂版)

著者:宮武 正明

発行年月:2018年4月・改訂版、2021年2月・三訂版

「本書は、保育・福祉・教育を学ぶ学生が実際に現場に立ったときに役立つように、対人社会サービス、社会福祉援助の意義と方法を、広い範囲に渡って、実際の保育や福祉の現場の記録および事例をもとにわかりやすくまとめたものである。」(本書のねらい より)

対人社会サービス・社会福祉援助の実践活動に役立つ、いま社会福祉を学ぶ「最初の一歩」に最適。“事例(生きた教材)”から学び社会福祉の理解と実践にスムーズに活かせる最良のテキスト。福祉の現場でさまざまな課題に取り組んできた著者が自らの豊かな体験を次世代につなぐ実践の書。

シリーズ福祉に生きる68 平野恒

シリーズ福祉に生きる68 平野恒

著者:亀谷 美代子

発行年月:2018年3月(第三刷)

次の世代を担う子どもを育てる。いつのときも、保育を必要とする子どものために「なぜ保育がこの子どもたちに必要なのか」「保育とは何なのか」を考えること。
「保育事業の真の目的は、子どもを集団生活になじませることよりも、まず子どもの生命の尊さを、子どもにも人としての権利を認めることが重要だ。」
現・横浜女子短期大学を創設、保育者養成を高等教育に位置づけ、児童福祉施策の実現、保育者の地位向上・待遇改善に尽力した「神奈川のお母さん」の生涯(1899~1998)。