京都「特別学級」成立史研究―史料と論究

著者:玉村公二彦

発行:2021年2月/発売:2021年4月

価格:18,800円(本体17,091円+税10%)

ISBN:978-4-908926-53-2

体裁:B5判・640頁・上製・カバー装

京都「特別学級」成立史研究―史料と論究

「特別学級」その発想の端緒は? 設置と運営を担った人々の模索と苦闘の跡を語る、稀有な史料を一挙復刻し辿る、初の京都「特別学級」実践概史。
明治期から障害児者の教育・保護事業に先駆的に取り組んでいた地、京都――戦前戦中期に「特別学級」の設置と実践を旺盛に展開したのも京都だった。小学校・児童の「特別学級」実践と模索を跡づける、現場を担った教師や京都市関係者の残した稀少で貴重な史料を一堂に会し、その意義を確認し、後世への遺産として復刻する。

パンフレットはこちら

目次〈頁〉

はじめに 〈i〉

序章 史料から浮かび上がる歴史
一 京都の先駆性:障害児者の教育・保護事業 〈1〉
二 「特別学級」研究史と京都の「特別学級」 〈2〉
 1 戦後における知的障害教育史の開拓
 2 「特別学級」の史的研究 〈3〉
三 京都における「特別学級」の設置とその研究 〈5〉
 1 設置と模索・展開の歴史
 2 京都市特別児童教育研究会 〈8〉
四 本書の構成及び史料 〈9〉
 1 「特別学級」実践史(第Ⅰ部) 〈10〉
 2 使用史資料と史料編(第Ⅱ部) 〈11〉

第Ⅰ部 京都における「特別学級」の形成と展開

第1章 京都における「特別学級」設置前史(明治期):脇田良吉の淳風小学校・「特殊教育」提案・白川学園
一 「特殊教育」の発想の端緒:明治三〇年代の脇田良吉の実践基盤と課題意識の形成 〈19〉
 1 就学率の飛躍的増大と脇田の位置
 2 教育方法上の問題点と教育調査 〈20〉
 3 教育方法上の改善:脇田の訓練論への傾斜 〈21〉
二 「特殊教育」の模索と提案 〈22〉
 1 「無落第主義」から「特殊教育」へ:淳風小学校での「特殊教育」の実践的模索
 2 「特殊学校」の提案 〈24〉
 3 「春風倶楽部」 〈25〉
 4 「春風倶楽部」的形態の否定と「特殊教育研究所」構想 〈26〉
三 文部省訓令による「特別学級」の奨励と京都府教育会による白川学園の創設 〈27〉
四 むすびにかえて:明治三〇年代から明治四〇年代初頭における「特殊教育」模索と白川学園 〈30〉
 1 「特殊教育」の発想と模索の出自
 2 教育問題としての落第問題と進級問題 〈31〉
 3 「特殊児童」への着目の特質 〈32〉
 4 文部省訓令第六号と京都府教育会の「低能児教育」への展開の関連
 5 その後の展開 京都における「特別学級」の前史および障害児教育・福祉の成立史との関係 〈35〉

第2章 大正デモクラシー期における「特殊児童調」と初めての「特別学級」設置:藤井高一郎と斎藤千栄治
一 「特別学級」設置への模索:斎藤千栄治と藤井高一郎 〈37〉
二 藤井高一郎と「京都市に於ける特殊児童調」:「特殊児童」の把握 〈38〉
三 藤井高一郎の「特殊機関の充実的建設」と京都市視学城野亀吉の発信 〈42〉
四 成徳小学校における「特別学級」の設置と「特別学級」での取り組み 〈43〉
五 七条小学校、桃園小学校などの「特別学級」:文部省『全国特殊教育状況調査』(一九二四年)にみる 〈45〉
むすびにかえて  47

第3章 大正・昭和初期における「特別学級」実践の模索:京都市崇仁尋常小学校と有馬良治の模索
はじめに 〈51〉
一 有馬良治の経歴とその教育実践の模索 〈52〉
二 京都市崇仁尋常小学校と「ペスタロツチーへ復れ」 〈53〉
三 崇仁尋常小学校における学級編成と「特別学級」の模索 〈57〉
 1 学級編成:能力別学級編成と特別学級
 2 有馬良治による「特別学級」の模索と発信 〈58〉
おわりに 〈61〉
補節 有馬良治についての星島四郎と森信三の回想 〈62〉

第4章 京都府師範学校「停滞児学級」と『停滞児教育研究』:上原昭平と渡邊昌司
一 京都府師範学校附属小学校「停滞児学級」 〈70〉
二 「停滞児学級」における児童研究と教育の実際 〈71〉
 1 児童研究 〈72〉
 2 教育の実際
 3 総括と提案:「停滞児教養上の諸問題」 〈73〉
三 「停滞児学級」の担い手とその終焉 〈74〉
むすびにかえて:「停滞児学級」の性格とその後の渡邊昌司、上原昭平 〈75〉
補論 池田太郎と上原昭平との交叉、その後:「伸びる素質のある劣等児童に対して」への上原の示唆と田村一二との出会い 〈77〉

第5章 斎藤千栄治の提言と京都市における「異常児」施策の発展:『学齢児童に関する調査』『児童保護に関する調査』
一 斎藤千栄治と『異常児特別教育の振興』:全国教育大会での提言「文部省諮問案に対する答申」 〈83〉
二 京都市社会課『学齢児童に関する調査』『児童保護に関する調査』 〈85〉
 1 『学齢児童に関する調査』における「異常児童」の把握 〈86〉
 2 「異常児童」に対する対策構想:『児童保護に関する調査』 〈88〉
三 その後の教育調査と施策:京都市児童院の調査など 〈89〉
むすびにかえて:斎藤千栄治と児童養護

第6章 崇仁小学校における能力別学級編制と「特別学級」の再興:高宮文雄と京都市特別児童教育研究会
はじめに:有馬良治の遺産と高宮文雄 〈93〉
一 崇仁小学校における「特別学級」再興の背景 〈94〉
 1 伊東茂光校長と「崇仁教育」
 2 昭和恐慌下における崇仁小学校
 3 中嶋源三郎「児童融和教育」の提唱:障害と差別 〈95〉
 4 「劣等児研究会」:崇仁小学校と師範学校及び附属小学校との交叉
二 能力別学級編制と「特別学級」 〈96〉
 1 高等科の併設と『本校施設の梗概』
 2 学級編制 〈97〉
三 「特別学級」(高宮学級) 〈100〉
四 高宮文雄と京都市特別児童教育研究会 〈102〉
むすびにかえて 〈103〉

第7章 京都市立養正尋常高等小学校「特別学級」と田中寿賀男
はじめに 〈107〉
一 京都市立養正尋常高等小学校「特別学級」の開設 〈108〉
二 田中寿賀男と「特別学級」の実際 〈109〉
 1 田中寿賀男と「特別学級」の記録
 2 学級編成の方法と児童の実態
 3 「特別学級」における教育の実際 〈112〉
三 『養正特別学級概況』と『座談会摘要』 〈113〉
四 その後の活動と国民学校下の「特別学級」 〈114〉
むすびにかえて 〈116〉
補論 危機的限界状況における「特別学級」:田中寿賀男『室戸台風特別学級避難記録』(一九三四年九月)を中心として 〈118〉

第8章 滋野尋常小学校「第二部学級」と実践の発展:田村一二の「特別学級」実践の展開
はじめに 〈125〉
一 京都市立滋野尋常小学校「特別学級」の設置と元山清七 〈126〉
 1 斎藤千栄治の学校運営と「特別学級」:「教育方針」
 2 元山清七の滋野小学校「第二部」学級での実践:『精神薄弱児の 作業を主としたる教育』 〈128〉
二 田村一二の着任と実践:生活指導実践の論理と心理 〈130〉
 1 田村一二の「特別学級」の出発と「心境の変化」 〈131〉
 2 『精神薄弱児の生活指導』 〈132〉
三 国民学校体制と『鋏は切れる』 〈135〉
 1 「忘れられた子等」「両刃漸撃」
 2 『鋏は切れる』
 3 『忘れられた子等』『石に咲く花』 〈136〉
 4 京都市特別児童教育研究会『勿忘草』 〈137〉
むすびにかえて:石山学園の創設と『手をつなぐ子等』 〈138〉

参考・引用文献 〈114〉

図表一覧
表0-1 京都市における「特別学級」の設置と担任の推移
表0-2 戦前戦中における京都市「特別学級」関連年表
表1-1 全国及び京都府の就学率の推移
表1-2 淳風小学校の学級数、教員数、児童数(明治31~35年度)
表1-3 「春風倶楽部」毎週時間数
表2-1 「京都市特殊児童調」による「特殊児童」数と対応する「特殊教育機関」構想
図2-1 藤井高一郎・城野亀吉による「京都市特殊教育機関建設案」
表3-1 有馬良治の崇仁小学校時代
表3-2 一九二三年度卒業生の欠席日数及ぎ出席率
表5-1 「学齢児童に関する調査」で把握された広義の「異常児童」数(一九二九年一一月末現在)
 (史料1)崇仁尋常高等小学校『学級編制ニ関スル研究委員会記録』(昭和一一年三月)
 (史料2)高宮学級の概要(一九三六年三月)
図7-1 編入児童選定の手続き
図7-2 養正小学校「特別学級」編入児童の概要(一九二九年度~一九三五年度)
 (史料3)『昭和十一年二月二十四日 座談会摘要 田中訓導』綴り
図7-3 京都市養正尋常高等小学校平面図

第Ⅱ部 史料編 京都における「特別学級」の展開と実践

A 京都市特別児童教育研究会と「特別学級」の展開
[A1]『異常児教育』創刊号 1933.7.10 〈157〉
[A2]『異常児教育』第2号 1935.6.12 〈189〉
[A3]『異常児教育』第3号 1937.4.10 〈231〉
[A4]斎藤千栄治「異常児教育の体験:精神薄弱児の教育」 1937.6.15 〈257〉
[A5]『異常児教育』第4号 1939.4.20 〈261〉
[A6]『勿忘草』1 1942.3.31 〈281〉
[A7]三谷隼雄『京都市に於ける精神薄弱児を対象とせる養護学級児童検診報告 第一報』 1943.5.28 〈305〉
[A8]『勿忘草』2 1943.9.15 〈341〉

B 京都市滋野尋常小学校「特別学級」の実践
[B1]『精神薄弱児の 作業を主としたる教育』 1929.2 〈369〉
[B2]田村一二『精神薄弱児(劣等児低能児)の図画』 1934.9.15 〈459〉
[B3]『精神薄弱児の生活指導』 1936.11.3 〈499〉
[B4]田村一二『鋏は切れる』 1941.5.10 〈551〉
[B5]田村一二氏講演「教育精神」 1942.10.30 〈619〉
あとがき 〈631〉

【著者紹介】玉村公二彦(たまむら・くにひこ) 京都女子大学教授、奈良教育大学名誉教授。京都大学大学院教育学研究科博士後期課程学修退学。著書『障害児の発達理解と教育指導:「重症心身障害」から「軽度発達障害」まで』(三学出版、2005 年)、『オーストラリアにおける「学習困難」への教育的アプローチ』(共著、文理閣、2006年)、『発達のひかりは時代に充ちたか?:療育記録映画『夜明け前の子どもたち』から学ぶ』(共編著、クリエイツかもがわ、2017 年)等。

ご注文・お問い合わせ