私の記録、家族の記憶 ケアリーヴァーと社会的養護のこれから

著者: 阿久津 美紀

発行年月:2021年8月

価格:2,970円(本体2,700円+税10%)

ISBN:978-4-908926-20-4

体裁:A5判・238頁・上製・カバー装

特記:カバー画:佐藤仁美「ただ ひかり さす」

私の記録、家族の記憶 ケアリーヴァーと社会的養護のこれから

「この本は、家庭での養育が難しく、社会における福祉制度の中で養育された子どもに関する記録をテーマにしています。現在、児童虐待など様々な家庭の理由により、実親を中心に構成された家庭ではなく、児童福祉施設やファミリーホーム、里親家庭、特別養子縁組などで養育される子どもが多くいます。一般的に日本では、こうした児童福祉制度について、「社会的養護」「社会的養育」「代替的養育」など様々な用語で説明されますが(本書では、社会的養護という用語を使用していく)、この本は、こうした子どものケアを中心に書いているわけではありません。あくまでも、そこで生活した子どもたちに関する「記録」を中心に扱った本です。」(「まえがき」より)

「この本は、保護者のいない児童、被虐待児など家庭環境上、養護を必要とする児童を公的な責任で養育する、「社会的養護」に関する記録や記録管理システムについて取り上げている。同時に、この社会的養護で養育された経験をもつケアリーヴァー(care leaver)と呼ばれる当事者たちが記録を探し、その記録へアクセスするために乗り越えるべき課題及びその支援の方法についても言及していく。」(「序章」より)

【目次】

まえがき 社会的養護の記録との出会い

 序章 社会的養護に関する記録をとりまく課題 1
1 世界と日本の研究動向と状況
2 ケアリーヴァーにとっての社会的養護における記録
3 本書で提示する課題
4 社会的養護の記録とは
5 用語の定義について
  社会的養護 ケアリーヴァー(care leaver) アイデンティティ プライバシー レコード(records)

 第1章 日本の社会的養護に関する記録の管理
児童相談所と国立・民間の児童福祉施設を事例に 21
1 児童相談所で作成される児童福祉施設関係記録
 1.1 児童記録票の記録管理と公開に関する調査
   児童相談所の作成する記録
2 国立の児童福祉施設の管理する記録
  国立児童自立支援施設を事例に
 2.1 国立武蔵野学院が作成する記録
 2.2 国立武蔵野学院図書・資料室
   記録とその利用
3 民間の児童福祉施設の管理する記録
  児童養護施設を事例に
4 記録の中の個人情報をめぐる諸課題
記録の保存年限の延長と利活用

 第2章 家族の記憶とケアリーヴァーの記録 イギリス、オーストラリアにおける実践から 41
1 ケア記録への注目と記録の役割
2 イギリスにおけるケア記録へのアクセス
 2.1 ガスキン裁判
 2.2 当事者団体ケアリーヴァーズ協会の取り組み
   クリアマーク(CLEARmark)の導入
3 オーストラリアにおけるケア記録へのアクセス
 3.1 社会的養護で育った3 つのグループとアーカイブズプロジェクト
 3.2 フー・アム・アイ?(Who Am I?)プロジェクトと
   レコードコンティニュアムモデル
当事者団体の活動からの学びと日本のこれから

 第3章 イギリス(スコットランド)における歴史的な虐待調査と組織の記録管理 2011年公文書(スコットランド)法に与えた影響 65
1 児童虐待と記録に関する調査
  ショーレポートから浮上した記録に関する課題
 1.1 スコットランドにおける児童虐待調査の着手
 1.2 ショーレポートの構成と概要
 1.3 スコットランドにおけるレジデンシャルスクールや
   チルドレンズホームの記録
  (1)なぜ記録が重要なのか
  (2)調査を遂行する上で直面した問題
  (3)記録にアクセスしたケアリーヴァーの経験
  (4)記録についての法律の背景
  (5)発見したことへの調査の探究
   a. 第三セクターの組織 b. 宗教組織 c. 地方自治体
   d. 地方自治体のアーキビストからの回答
2 ショーレポートからの記録管理に関する提言
3 新たな公文書法とレコードマネジメントプラン
児童虐待調査から見えた組織の記録管理の課題

 第4章 オーストラリアにおける性的虐待調査の展開と守られるべき子どもの権利 レコードキーピングが児童虐待の抑止力になるのはなぜなのか 91
1 子どもの性的虐待への組織対応に関する王立委員会による調査
 1.1 王立委員会の設立とその役割
 1.2 専門調査報告書が示したこと
2 オーストラリアアーキビスト協会の取り組み
  王立委員会への提言から
 2.1 2012年11月26日付の王立委員会への提言
 2.2 2015年5月31日付の王立委員会への提言
 2.3 2016年4月11日付の王立委員会への声明
 2.4 2016年10月13日付の王立委員会への提言
3 子どもの権利のためのナショナルサミットに向けて
王立委員会の調査が記録の専門家たちに与えた影響

 第5章 日本の新たな社会的養護政策の展開と記録管理 韓国の養子縁組に関する記録管理政策との比較を手掛かりとして 117
1 養子縁組に関する記録管理と当事者のアクセス
  日本における養子縁組制度と記録
 1.1 日本における養子縁組制度
   国内養子と国際養子
1.2 養子縁組に関する記録
2 韓国の養子縁組に関する記録管理と当事者への情報提供
2.1 韓国における養子縁組の背景と制度
2.2 韓国の養子縁組に関する記録の保管と開示
  (1)中央養子縁組院の設立から、児童権利保障院へ
  (2)データベースプロジェクト
  (3)養子の出自を知る権利とは
2.3 韓国の養子縁組記録の展望
3 民間の養子縁組あっせん団体に対する記録管理に関する調査
 3.1 養子縁組あっせん団体が管理する記録管理の現状
 3.2 養子縁組記録へのアクセス支援
   社会福祉法人国際社会事業団(ISSJ)の実践
記録管理体制を増加する特別養子縁組にどう備えていくのか

 第6章 社会的養護におけるアーキビストの専門職としての役割 公平で、公正な利用者の支援とは何か 147
1 ICA のアーカイブズへのアクセスの原則とガイダンス
2 「アーカイブズへのアクセスに関する原則」と現場実践における障壁とジレンマ
  母子保護施設レーベンスボルンの記録とその記録提供の在り方
3 オーストラリアにおける専門調査報告書への提言から見えてきたアクセスの課題
  専門家、当事者、施設の様々な観点から見たアクセス
 3.1 専門職団体の立場から
 3.2 当事者団体の立場から
 3.3 施設を運営している(いた)立場から
4 アーキビストの専門職としての役割
社会的弱者に関する記録とそれに関わる専門職

 終章 課題と展望 181
1 ケアリーヴァーのための記録への安定したアクセスを目指して
 1.1 社会的養護における記録と記録管理の役割
   短い記録の保存年限 子どもの権利ノート・育ちアルバム
 1.2 個人情報の開示と公開
   ケアリーヴァーと第三者の間
 1.3 専門職が果たすべき役割
   ライフストーリーワーク 記録に関わる専門職の重要性
2 社会的養護における記録とアーキビストの役割
  記録管理の年限 ケアリーヴァーが記録にアクセスできる年齢と知る内容 専門家どうしの連携 記録管理システムの構築・整備へ
参考文献
あとがき 本書が目指したもの
索引

著者紹介:(あくつ・みき)目白大学人間学部児童教育学科助教。東京学芸大学卒業、学習院大学大学院人文科学研究科博士前期課程修了、同博士後期課程単位修得退学。博士(アーカイブズ学)。専門:アーカイブズ学、記録管理、資料保存、社会的養護など。

ご注文・お問い合わせ