里子・里親という家族

ファミリーホームで生きる子どもたち

著者:吉田 菜穂子

発行年月:2012年12月(大空社刊)

価格:1,540円(本体1,400円+税10%)

ISBN:978-4-283-00797-0

体裁:A5判・199頁・並製

里子・里親という家族

ファミリーホーム=「小規模住居型児童養育事業」(第2種社会福祉事業。児童福祉法第6 条3第8項)の通称。要保護児童と呼ばれる血縁のない子どもたちを自治体から預かって養育する制度・組織で2009年に法定化された。
多人数の里子を養育する里親の著者夫婦は、福岡県の第1号として2010年にファミリーホームに移行し、「吉田ホーム」として血縁のない子どもたちと生活している。本書は著者が、子どもたちに出会い、里親となり、子どもたちを養育して実親のもとに返し、あるいは社会に巣立たせてきた経験を「里親日記」のように語った体験・実話集。1話1話が、子どもとその実の親、また学校・施設や地域社会と格闘する「里親」の記録となっていて、読む者は、嘆息・同意・落胆・称賛・苦笑を禁じ得ず、しかし最後には希望と勇気を与えられる稀有な「人生の書」。

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私は里親である。(…)
これまでに、20人あまりの子どもたちと、ともに
暮らしてきた。血縁のない子どもたちである。
どの子にも実の親が存在する。
子どもは、どんなに疎まれようとも、
どんなに嫌われようとも、
どんなに足げにされようとも、
実の親が大好きだ。
里親がどんなに心を尽くそうとも、
どんなに慈しもうとも、
どんなに愛を注ごうとも、
実の親にはかなわない。
それでも、私は、里親をやめない。
里親をやめることができない私がいる。(著者)

【目次】※子どもの名前は全て仮名

私は里親である。
わが家は、血縁のない子どもたちを県よリお預かりして、養育する「ファミリーホーム」です。/ファミリーホーム「吉田ホーム」のいま/さゆりとみどりの会話/子どもたちとの出会いまで

交流期間が長かった ひとみは…
ひとみの日誌

吉田ホームの一日/他者(ひと)を気づかう生活習憬を/吉田ホームの標準的な日課/ホームの食事/限りを知らない異常な食欲 被虐待の子どもたち/実家族との交流

実母をつなぎ止めておきたい一心の 純子(15歳)は…
「里子の気持ち」/ 自立への支援

わが家の家計/ホームで預かるさまざまな困難を持つ思春期の子どもたち

実母と酷似した生育歴の少年 博之(16歳)は…
頻発する盗癖/大変似た生い立ちの母と子/二点の困難を、まざまざと見せつけられました

実母との生活を夢見た少女 和美(16歳)は…
学校・児童相談所・わが家の連携/「生まれて一回もない!!」

実父の厳しいしつけから放浪した少年 信雄(16歳)は…
コミュニケーション能力の圧倒的な不足/人に厳しく自分に甘い/「信雄の観察日誌」より/暴力

知的障がいを持つ少年 隆(8歳)は…
子どもの間で威嚇の悪循環が…/声掛けの成果

「吉田ホームを応援する会」/「吉田ホームを応援する会」を立ち上げました。 紫牟田和男(吉田ホームを応援する会会長)
週末ボランティアとして学んだこと 田中穂奈美(九州大学大学院修士課程修了)

養育とは、里親とは

里子になる、里親になる

「パパ・ママ」と呼んでくれた幼い兄弟 祐一(4歳)・祐二(2歳)は…
里親委託になった理由/祐一と祐二 養育日記/「養育里親」になる決断/実母との信頼関係/家庭復帰に向けて/家庭復婦が決まった時の気持ち

家庭復帰後、行方がわからなくなった少女 文香(15歳)は…
精神疾患の実母/片づけをしない/文香との応酬/召喚・謹慎の高校生活/続く朝帰り…/10年ぶりに実父と再会/退学そして実父の元へ家庭復帰/最後のメール

専門里親研修のレポートより

どこか憎めない激情型性格の少女 未知子(15歳)は…
戻るべき場所がない/学校の問題児として/実母と親しく言葉を交わす/変化していった未知子/里親としての残された仕事

カルチャーショックを受けた一時保護委託の少年 洋平(16歳)は…
保護する理由が見当たらない/継父と実母と実父と/言い残した気持ちを再現

季節里親として預かった小学生兄弟 明(11歳)・登(9歳)は…
「赤ちゃんポスト」を知った子どもたち/あちこちに「赤ちゃんポスト」があったほうがいい/生死が迫り来る状況を体験した子ども

あとがき/私たち夫婦の大切な娘・舞衣ヘ 私たちの子どもになってくれた子どもたちへ 吉田健児・菜穂子

これからの里子・里親へ
里子・里親とファミリーホームをめぐる社会/「里子・里親」関連の用語/「吉田ホームを応援する会」設置要綱・実施要領
里子・里親をもっと知りたい人へ 津曲裕次(長崎純心大学大学院教授)
著者から読者へ

【著者紹介】(よしだ・なおこ)社会福祉士・保育士・介護福祉士。吉備国際大学大学院修士課程修了、修士(社会福祉学)。長崎純心大学大学院博士後期課程修了、博士(学術・福祉)。1998年、里親登録。2009年、専門里親登録。2010年、小規模住居型児童養育事業(吉田ホーム)開設。著書は他に『里子事業の歴史的研究 福岡県里親会活動資料の分析〈長崎純心大学人間文化研究論文叢書1〉』(2011年、大空社)、『里親になりませんか : 子どもを救う制度と周辺知識』(2020年、日本法令)がある。

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