民生委員制度の原点 岡山県済世顧問制度の通史的論究 現代地域福祉の視座を求めて

著者:山本浩史

発行年月:2025年8月

価格:4,400円(本体4,000円+税10%)

ISBN:978-4-86688-244-4

体裁:A5判・286頁・上製・カバー

民生委員制度の原点 岡山県済世顧問制度の通史的論究 現代地域福祉の視座を求めて

「岡山県済世顧問制度は、1917(大正6)年に創設され、翌年に創設された大阪府方面委員制度と並び現在の民生委員制度の源流の一つとされている。全国民生委員児童委員連合会は済世顧問制度創設から数えて、2017(平成29)年を民生委員制度100周年としている。また済世顧問制度が公布された5月12日を民生委員・児童委員の日とし、5月18日までを活動強化週間としている。このように、現在でも民生委員制度の原点として認知されている済世顧問制度であるが、その全体像が必ずしも明らかにはされておらず、先行研究の数もそれほど多くはない。このことから、本研究では済世顧問制度の全体像を明らかにすることを第一義的な目的とした。
 また済世顧問の思想や人物像、そして、その実践を検証することは、民生委員の原点にアプローチすることにもつながり、どのような過程を経て、現在の民生委員制度にたどり着いたのか、民生委員制度発祥の地とされる岡山県を事例として見て行くことにもなる。」(「はじめに」より)
 一次資料から抽出構成した多数の図表を収載し、初めて制度変遷の実情を克明に跡づける労作。

■主要キーワード
社会福祉 社会保障 社会事業 地域共生社会 地域福祉 自助・互助・共助・公助 防貧施策 ハンセン病隔離施策 軍事援護 『連帯時報』

■(目次より)
Ⅰ章 岡山県済世顧問制度とは
Ⅰ-1 済世顧問制度の通史とその概略
Ⅰ-2 創設者・岡山県知事笠井信一の考究について
『済世顧問制度之精神』とは/制度の対象と目的/済世顧問の資格、義務及び職務
Ⅰ-3 済世顧問制度とドイツ・エルバーフェルト制度
日本におけるエルバーフェルト制度/笠井信一におけるエルバーフェルト制度の理解/済世顧問らの認識
Ⅰ-4 済世顧問のモデル・初代済世顧問・藤井静一について
プロフィール/実践/藤井静一の信念へのアプローチ(「私の信念」、『備忘録』、報徳主義及び日蓮宗)

Ⅱ章 岡山県済世制度による実践
Ⅱ-1 済世制度とケースワーク
ケースワーク理論の整理(竹内愛二、小澤一、海野幸徳、方面委員制度とケースワーク論)/済世顧問制度におけるケースワーク(調査紙、岡山県社会課)
Ⅱ-2 済世顧問・済世委員による実践
個別支援の分析/済世団体による実践(済世団体の設立と背景、川上郡成羽町済世会・富家村済世会)

Ⅲ章 岡山県済世顧問制度と他施策との関係
Ⅲ-1 ハンセン病隔離施策における済世顧問の関与
済世顧問らの関与と認識/済世顧問らへの協力要請/十坪住宅運動/「無癩県運動」
Ⅲ-2 済世制度と軍事援護
軍事援護と個別支援(開戦前後の動向、済世顧問及び方面委員に対する軍事援護の指示、寄稿文に見られる済世顧問の軍事援護に対する思い)/戦時下における部落会等と済世顧問及び方面委員(部落会等における政策動向、岡山県の部落会等に対する施策)

Ⅲ-3 方面委員令と済世顧問制度
各地の方面委員制度の導入状況、全国の方面委員制度、岡山県の方面委員制度
岡山県における方面委員制度導入前の状況(救護法施行と済世制度/済世委員と方面委員の名称)
岡山県における方面委員制度の導入(方面委員令と岡山県の対応/済世顧問から見た方面委員/母子保護法と方面委員/軍事援護と方面委員/新体制と方面委員)

Ⅳ章 岡山県済世制度から民生委員法へと
終戦直後の政策動向/終戦直後における岡山県の状況と済世顧問制度の終焉

終章 岡山県済世顧問制度と現代地域福祉への視座
1 済世顧問制度の展開過程と新たな見解
2 済世顧問制度の評価と批判的考察(済世顧問制度全般に対する評価/済世顧問制度による実践/済世顧問制度における貧困観/民生委員制度への影響と功罪)
3 地域福祉への視座

おわりに(歴史事象研究の方法・視点)

■著者紹介:山本浩史(やまもと・ひろふみ)
広島県出身。社会福祉士、防災士。現在、新見公立大学健康科学部地域福祉学科教授。博士:文化科学(岡山大学2010)・社会福祉学(大阪府立大学2023)。社会福祉法人恩賜財団済生会支部岡山県済生会において岡山済生会総合病院等に勤務した後、大学教員に。川崎医療福祉大学医療福祉学部講師、准教授、岡山県立大学保健福祉学部准教授、新見公立短期大学地域福祉学科教授を経て現職に至る。

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