漱石を聴く コミュニケーションの視点から

著者:小川 栄一

発行年月:2019年3月

価格:3,960円(本体3,600円+税10%)

ISBN:978-4-908926-61-7

体裁:菊判・242頁・並製・カバー装・横書き・左開き

特記:「図書新聞」2019年6月8日・3402号に書評掲載

漱石を聴く コミュニケーションの視点から

夏目漱石の小説作品をコミュニケーションの観点から分析した書。
漱石の「F+f」理論に基づくコミュニケーションが、初期には笑いやユーモアの表現、後期には人間対立や人間不信など近代人の懊悩の表現に用いられたことを明らかにする。
漱石の東京訛り、うそや翻弄の会話、演説なども考察する。

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 目次(一部略)
第1 章 漱石作品研究の意義
 コミュニケーション史的研究の構想/漱石作品会話研究の方法/漱石の生い立ちと言語環境/調査対象の作品とその底本
第2 章 漱石と近代日本語
 漱石の「東京訛り」/「東京訛り」(母音・子音に関するもの)/「東京訛り」(清濁等に関するもの)/「江戸語」を意味する「江戸っ子」/漱石が「東京訛り」にこだわる理由
第3 章 漱石の文学理論と会話の表現
 漱石作品における「F+f」理論/「文芸上の真」と「科学上の真」/通常のコミュニケーションと「F+f」理論/fの発生とコミュニケーション/会話における「協調の原理」/漱石の会話観/会話の心理分析へ
第4 章 漱石作品に現れるコミュニケーションの類型
 漱石作品に現れる「不完全なコミュニケーション」/不完全の原因が話し手にあるもの/不完全の原因が聞き手にあるもの/沈黙によって会話が中断するもの/洒落本『傾城買四十八手』における沈黙の会話/表現技法としての不完全なコミュニケーション
第5 章 伝聞によるコミュニケーション
 伝聞によるコミュニケーションと「F+f」理論/漱石作品に現れる伝聞表現/『吾輩は猫である』の伝聞表現/『坊っちゃん』の伝聞表現/『草枕』の伝聞表現/伝聞情報を伝える「能才/伝聞情報と「うわさの公式」
第6 章 翻弄のコミュニケーション
 「翻弄の発言」とは/『行人』の概要/「翻弄の発言」の定義/「翻弄の発言」の分析/「翻弄の発言」の表現技巧/漱石の創見
第7 章 解釈のコミュニケーション
 解釈とFの推移/漱石作品に現れる「解釈」/『こころ』に現れる「解釈」/『こころ』に現れる「解釈」の実例/解釈と翻弄/解釈と「F+f」理論
第8 章 「うそ」のコミュニケーション
 「うそ」の談話的特質/漱石作品に現れる「うそ」の多用/「うそ」と「役割」との関係/気兼ねによる「うそ」(虞美人草)/性役割による「うそ」(こころ)/真実探究の「うそ」(明暗)/『傾城買四十八手』における「うそ」/「うそ」へのこだわり
第9 章 漱石作品における演説の談話分析
 近代における演説と漱石作品の演説/漱石作品における「演説」の意味・用法/漱石の演説の文末表現/漱石の文学理論に基づく演説の試み(吾輩は猫である)/詭弁と含意の演説(坊っちゃん)/聴衆に強い衝撃を与える演説(野分)/漱石の文学観を述べた演説(三四郎)/漱石作品における演説の特質
終章 漱石作品のコミュニケーション類型と文学理論
 漱石作品に現れるコミュニケーション類型の特質/ 「F+f」理論とコミュニケーション/漱石作品におけるコミュニケーションの時代性
主要参考文献・資料一覧/索引/表7点

【著者紹介】武蔵大学人文学部教授。博士(言語学)。主要著書:『延慶本平家物語の日本語史的研究』(勉誠出版 2008年)、『平家物語長門本延慶本対照本文』(共編 勉誠出版 2011年)、『岩波 日本語使い方考え方辞典』(共編 岩波書店 2003年)、『漱石作品を資料とする談話分析 漱石の文学理論に裏付けられたコミュニケーション類型の考察』(科学研究費助成事業研究成果報告 2017年)他。

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