【2】卒業者の職業と生活から見た高校工業教育:教育の成果・効果の社会学

高校工業教育における教育課程の意図、実施及びその達成状況に関する研究(全2冊)

著者:山田宏

発行年月:2026年2月

価格:9,900円(本体9,000円+税10%)

ISBN:978-4-86688-246-8

体裁:B5判・x+359頁・並製・カバー

【2】卒業者の職業と生活から見た高校工業教育:教育の成果・効果の社会学

■〈工業高校が卒業者の職業と生活に及ぼした成果とその限界について豊富なデータにより解明〉
高校工業教育の成果・効果、すなわちそこで知識・能力が習得され、その有用性が発現されるプロセスについて、卒業者のライフコース(職業と生活及びそこでの認識)とも関連付けて解明することを試みたものである。また、そこでは卒業者の出自や職業と生活に関して、工業科以外の高校教育や高専・大学等の他の機関による工業教育の経験者と比較することにより、後期中等教育(高校教育)における職業教育の機能と限界についても明らかにする。
*図31枚、表135枚を掲載

○推薦の言葉○ 木村 元(青山学院大学特任教授、一橋大学名誉教授)
「高校工業科は、入学者の特性や労働力需要の変化への対応などの様々な困難を経ながらも、職業教育の機能が維持されてきたほぼ唯一の後期中等教育機関であろう。山田氏は、二書を通して、カリキュラムの意図・実施・達成の相へ着目し、戦後の職業教育の機能が維持されてきた要因を探るという野心的な試みを行った。小学科の実態の解明をはじめ、職業教育としての機能を維持し続けることができた理由を卒業生のライフコースを交えながら実証的に明らかにしている。幅広い資料を駆使し、これまでの高校工業科を対象としたカリキュラム史研究の水準を凌駕した力作であるといえよう。」


《目次(全)》
序章に代えて  「達成されたカリキュラム」を評価する観点と方法
1.「達成されたカリキュラム」を評価する枠組み
2.「達成されたカリキュラム」を評価する観点とそのための資料
3.工業科卒業者に期待されていた職務とそれに必要な資質
4.その他

【第Ⅰ部】卒業者と企業による高校工業教育の習得度と有用性についての評価―仕事の上でどのように役立ち、何が不足していたのか

第1章 卒業者の知識・技能の習得度と有用性の評価方法及びその資料
1.卒業者の知識・技能の習得度の直接的な把握
2.卒業者の知識・技能の習得度と有用性についての卒業者と企業による評価

第2章 知識・能力の習得度と教科の有用性を規定するプロセスの検証
1.高専卒業者の熱心度、習得度及び有用性を規定する要因についての重回帰分析
2.工業高校卒業者の熱心度、習得度及び有用性を規定する要因についての重回帰分析
3.習得度や有用性を規定するプロセスの意味
小括

第3章 工業科卒業者の知識と能力の習得度と有用性についての評価―実験・実習の有用性、英語の充実の必要性、意識・態度の教育への要望
第1節 卒業者が有する職務能力に関する評価
1.工業科卒業者の有する職務能力についての企業と卒業者から見た評価
2.職業資格や技能検定の取得
第2節 高校工業教育における普通教科と専門教科の比重
第3節 職務における専門教科の有用性についての評価と要望
1.専門教科における講義(座学)と実験・実習・製図等との比重
(1)卒業者から見た専門科目(講義)と実験・実習・製図の有用性
(2)卒業者から見た充実させるべき専門教科の種類
(3)企業から見た充実させるべき専門教科
(4)専門科目(講義)と実験・実習等の比重のまとめ
2.専門科目の有用性等についての評価と要望
(1)卒業者から見た専門科目の有用性等の評価
(2)企業から見た専門科目に関する要望
3.専門教科全般についての評価
(1)卒業者から見た専門教科全般についての評価と要望
(2)企業から見た専門教科全般についての評価
4.専門分野の領域の区分等についての見解
5.仕事の内容と高校での専門教育との関連
第4節 普通教科・科目の習得度と有用性についての評価と要望
1.数学と英語の習得度についての評価
2.卒業者から見た普通教科・科目の有用性についての評価
3.企業から見た普通教科・科目の有用性についての評価と要望
4.普通教科・科目についての評価のまとめ
第5節 卒業者の意識や態度に関する評価と要望
1.企業から見た卒業者の意識や態度についての評価と要望
2.卒業者による職業観、人物像等についての見解と要望
3.意識や態度の教育の位置付け
第6節 学校で習得される能力と職場で習得される能力
小括
補論 知識・技能の習得度と教科等の有用性についての工業教育機関間の比較

【第Ⅱ部】工業科卒業者の職業経歴とその変遷―どのような職業を選択し、どのような職務を経験してきたのか

第1章 卒業者の職業経歴についての評価方法とそのための資料
(1)適切な職業選択がなされたかについての初職の状況による評価
(2)学業と職業との関連が維持されているかについての職業経歴による評価

第2章 工業科卒業者の就職と進学の状況とその特徴―学校基本調査と同窓会会員名簿による分析
第1節 学校基本調査等による工業科卒業者の就職の状況とその特徴
1.工業科卒業者の就職率の推移とそれを規定する要因
2.産業別の就職者数の推移とその特徴
3.職業別の就職者数の推移とその特徴
4.業種・職種クロス集計の必要性とその資料
5.従業員規模別の就職者数の推移とその特徴
小括
第2節 学校基本調査等による工業科卒業者の進学の状況とその特徴
1.進学率と進学先の動向
2.就職後の大学等への進学動機とその結果
小括
第3節 同窓会会員名簿による工業科卒業者の就職の状況とその特徴
1.A工業高校卒業者における初職の業種・企業、従業員規模及び勤務地の変遷
2.B工業高校卒業者における初職の業種・企業、従業員規模及び勤務地の変遷
3.A校とB校から見た卒業者の初職を規定する要因
小括
補論 職業分類と実際に従事している職務との乖離について
1.日本標準職業分類における分類変更の問題
2.日本標準職業分類における分類基準の問題
3.技術者と技能者の区別に関する問題
第3章 工業科卒業者の職業経歴の類型化―社会調査と同窓会会員名簿による分析
第1節 SSM2005及びJGSS-2009LCSによる卒業者の職業経歴の把握と分類
1.対象者と利用可能なデータ
2.転職と異動の状況
3.類型別に見た職業経歴の特徴
(1)職業経歴による分類
(2)初職における各類型の特徴
(3)類型別に見た職業特性の変化
4.各類型への分化についての図式
5.JGSS-2009LCSとの比較
第2節 学校、小学科及び卒業年による職業経歴の差異
小括
(別添資料)類型別に見た工業科卒業者の職業経歴における転職と異動の状況
補論 卒業年代による職業特性の違いと類型による職業特性の違いとの関係

第4章 工業科卒業者の具体的な職業経歴―自伝的記録等による具体例とその特徴
第1節 自伝的記録等による職業経歴の具体例
1)A:無転職型の例
2)B:定年期転職型の例
3)C:中堅期転職型の例
4)若年期に転職しているが、中堅期転職型と見なしてよい事例
5)D:若年期転職型の例
6)E:若年期定年期転職型の例
7)F:多転職型の例
第2節 高校工業科卒業者におけるライフコースの典型ともうひとつの型
1.自伝的記録等から見た工業科卒業者の典型的なライフコースの特徴
2.1960年代半ばの卒業者のやや異なるライフコース
小括

第5章 工業科卒業者が従事してきた具体的な職務とそこでの評価―6つの典型的な状況とそこでの主な職務
第1節 復興・定着期の工業科卒業者が従事してきた職務
1.産業教育調査による卒業者の職種
2.国立教育研究所調査による工業科卒業者の職務構成
3.神奈川県教育委員会調査による工業科卒業者の職務構成
4.大阪府教育委員会調査による高校卒業者の職種
5.造船業における職種別学歴構成
小括
第2節 技術革新が工業科卒業者の職務に及ぼした影響
1.東京大学社会科学研究所による京葉地帯調査
2.化学工業における工業科卒業者への技術革新の影響
3.宮原誠一他によるN社M製鉄所調査における職務と学力
小括
第3節 中卒就職者の減少と高卒者による代替に伴う工業科卒業者の職務の変化
1.高卒技能工の採用
2.高卒技能工に対する評価
3.普通科卒と工業科卒との違い
4.工業卒業者が従事してきた職務の量的変化とその評価
小括
第4節 マイクロエレクトロニクス化の進展による職務の変化
1.マイクロエレクトロニクス化と工業科卒業者
2.高卒テクニシャン養成の試み
小括
第5節 技術の高度化と大卒者による職務の代替
1.工業科卒業者の職務の変化と大卒者
2.工業科卒業者と大卒者のそれぞれの認識
小括
第6節 1990年代以降の高校工業教育の縮小の下での工業科卒業者―「ノンエリート」とされる者と基盤技術を担う技能工
1.「ノンエリート」とされる者の職業経歴
2.基盤技術を担う技能工の職業経歴
小括

【第Ⅲ部】工業科卒業者の生活と認識―どのような生活を送り、仕事と学校や社会等についてどのように認識していたのか

第1章 工業科卒業者の生活水準及び仕事と学校や社会等に関する認識―職業経歴によるその差異
第1節 工業科卒業者による現在の仕事に関する認識と評価
第2節 工業科卒業者における収入・資産及び生活の状況とそれに対する評価
1.収入と資産の状況
2.生活の状況
第3節 工業科卒業者による実力主義と学歴主義に対する考え方
小括

第2章 他の学科等の中高卒就職者及び他の工業教育機関卒の就職者との比較―工業科卒業者による自己評価と大卒者との関係の影響
第1節 15歳での選択が職業生活とそこでの認識に及ぼす影響
1.現職とそこでの処遇についての比較
2.仕事、生活、学歴、社会等に関する認識についての比較
3.評点を規定する回帰式の推定
第2節 工業教育機関卒の就職者における生活と認識の差異とその要因
1.現職とそこでの処遇についての比較
2.仕事、生活、学歴、社会等に関する認識についての比較
3.評点を規定する回帰式の推定
4.第1節と第2節の結果の解釈上の問題
小括
補論 認識の評点を規定する回帰式の妥当性について
1.第1節と第2節における回帰式の関係について
2.回帰式の説明力について

第3章 高校工業教育が達成できたもの―留保条件付きの達成と否定的感情を煽るもの
1.高校工業教育が達成できたもの
1)卒業者の知識・能力の習得度とその有用性についての評価
2)卒業者の職業経歴における業種・職種やそこでの具体的な職務による評価
3)卒業者の生活水準、仕事と学校や社会等に関する認識による評価
2.工業高校を卒業したことについての総合的な評価
3.否定的感情を煽るものと目的を達成できなかった者
小括

第Ⅰ部から第Ⅲ部のまとめ カリキュラムはどのように達成されたのか

終章 高校工業教育の機能とそこへ進学することの意味
1.高校工業教育がその機能を維持し続けることができた要因
2.工業高校へ進学することの意味と今後のあり得べき姿
3.教育学における職業教育研究の弱さとその原因
4.残された課題

あとがき

引用・参考文献/索引

■著者紹介:山田宏(やまだ・ひろし)1952年生、71年東京工業高等専門学校電気工学科中退、76年東京大学教育学部教育学科卒業、76年から2012年まで経済企画庁、国土庁、内閣府、通商産業省、臨時教育審議会事務局、参議院事務局、海外経済協力基金、総合研究開発機構で勤務、2023年一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了 博士(社会学)。 〔著書〕 『高専教育の発見―学歴社会から学習歴社会へ』(矢野眞和・濱中義隆・ 浅野敬一編、岩波書店、2018年、第6章担当)、『境界線の学校史戦後日本の学校化社会の周縁と周辺』(木村元編、東京大学出版会、2020年、第7章担当)

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