【1】教育課程の意図と実際から見た高校工業教育:学習指導要領の策定経緯とその実施状況の歴史

高校工業教育における教育課程の意図、実施及びその達成状況に関する研究(全2冊)

著者:山田宏

発行年月:2026年2月

価格:9,900円(本体9,000円+税10%)

ISBN:978-4-86688-245-1

体裁:B5判・x+395頁・並製・カバー

【1】教育課程の意図と実際から見た高校工業教育:学習指導要領の策定経緯とその実施状況の歴史

■〈学習指導要領がいかに具体化されたのかを多くの教育課程表を収集することにより解明〉
各時期における教育課程(教育内容)の意図について学習指導要領の策定過程を具体的に跡付けることにより確認するとともに、それがどのような形で具体化されたのかについて収集した各校の教育課程表に基づき整理、分析する。また、他の職業学科と比べた工業科の特徴である多くの小学科への分化について、小学科の役割と実態について確認するとともに、多様化に対する批判について検討する。
*図31枚、表128枚を掲載

○推薦の言葉○ 木村 元(青山学院大学特任教授、一橋大学名誉教授)
「高校工業科は、入学者の特性や労働力需要の変化への対応などの様々な困難を経ながらも、職業教育の機能が維持されてきたほぼ唯一の後期中等教育機関であろう。山田氏は、二書を通して、カリキュラムの意図・実施・達成の相へ着目し、戦後の職業教育の機能が維持されてきた要因を探るという野心的な試みを行った。小学科の実態の解明をはじめ、職業教育としての機能を維持し続けることができた理由を卒業生のライフコースを交えながら実証的に明らかにしている。幅広い資料を駆使し、これまでの高校工業科を対象としたカリキュラム史研究の水準を凌駕した力作であるといえよう。」

《目次(全)》
序章 研究の課題とその方法
第1節 研究の課題―なぜ工業高校を問題とするのか
第2節 先行研究のレビュー
1.教育課程に関する研究
2.教育研究における職業教育の成果・効果に関する関心と職業教育の位置付け
3.本研究と問題意識の重なる研究
4.職業教育の成果・効果に関する調査
第3節 研究の枠組み、方法及び資料
1.研究全体の枠組み:三層構造のカリキュラム・モデル、政策のライフサイクル仮説、ライフサイクル分析
(1)教育課程の変遷及びそこで働く原則と変化要因
(2)卒業者の知識・能力の習得とその有用性及びその職業や生活への影響
2.研究の方法と資料
(1)「意図され、実施されたカリキュラム」について検討する方法とその資料
(2)「達成されたカリキュラム」を評価する観点とそのための資料
3.その他

【第Ⅰ部】新制高校発足から高度経済成長期までの高校工業科における教育課程の策定とその実施―カリキュラムにおいて何が意図され、どのように実施されたのか(1)

第1章 教育課程に働く原則・論理と実施されたカリキュラムに関するデータ
第1節 教育課程に働く原則・論理と教育課程編成例
1.普通教育と専門(職業)教育
2.教育課程に働く原則・論理
3.教育課程編成例の役割
4.教育課程から見た時期区分
第2節 実施されたカリキュラムに関するデータ
1.教育課程に関する実態調査
2.本研究における「教育課程表による集計結果」

第2章 「共通性の原則」から「産業・職業の論理」と「工業科の論理」の確立へ―戦後復興から高度経済成長に向かう中での工業科の教育課程の策定経緯とその内容
第1節 戦後復興期の教育課程―1947年教科課程から51年改訂学習指導要領まで
1.戦後初期の状況と1947年学習指導要領における高等学校の教科課程
2.1948/49年改訂教科課程と1951年改訂学習指導要領
第2節 高度経済成長に向けた教育課程―1955年及び60年改訂学習指導要領
1.戦後教育改革の見直しと職業教育への期待
2.1955年改訂学習指導要領の策定経緯とその内容
3.1960年改訂学習指導要領の策定経緯とその内容
小括
補論 1955年学習指導要領改訂に向けた教育課程調査と改訂後の実施状況調査

第3章 戦後復興から高度経済成長に向かう時期における教育課程の実施状況―「産業・職業の論理」の優越から後退へ
第1節 1947年教科課程の実施状況
第2節 1948/49年改訂教科課程から60年改訂学習指導要領までの教育課程の編成例
第3節 1948/49年改訂教科課程から60年改訂学習指導要領までの機械科における教育課程の実施状況
1.教育課程全体の実施状況
2.普通教科の教科別の実施状況
3.普通教科の科目別の実施状況
1)理数系の教科 2)人文社会系の教科 3)その他の教科
4.機械科における専門科目の実施状況
5.教科外活動等の実施状況
第4節 1948/49年改訂教科課程から60年改訂学習指導要領までの電気科における教育課程の実施状況
小括
補論1 「教育課程表による集計結果」の妥当性についての確認(1)
1.1951年改訂後の文部省等による調査との比較
2.1955年改訂後の文部省教育課程調査との比較
3.1960年改訂後の文部省教育課程調査との比較
補論2 普通科と工業科における普通教科の開設状況の比較

第4章 工業高校生の学力の推移とその特徴―1960年代後半における急速な低下とその後の低位安定
1.学力低下への嘆き
2.1960年代初めまでの工業高校生の学力―文部省「全国学力調査」による検証
3.普通科との学力差の拡大―東京都「高等学校入学者選抜状況調査」による検証
4.最近年に至る学力の変化―都立高校についての偏差値による検証
5.専門教科の学力の推移―全国工業高等学校長協会「標準テスト」等による検証
6.主観的な学力
小括
(別添資料)全工協の標準テストにおける電気関係の出題内容の比較

【第Ⅱ部】高校工業科における生徒の実態に配慮した教育課程の策定とその実施―カリキュラムにおいて何が意図され、どのように実施されたのか(2)

第1章 「生徒の実態重視の論理」への転換と教育課程編成の弾力化―「基礎・基本」の重視対「専門性」維持の試み―
第1節 「生徒の実態重視の論理」に基づく教育課程の検討―1970年及び78年学習指導要領改訂
1.1970年学習指導要領改訂による教育課程編成の弾力化の内容
2.高校職業教育における新たな課題
3.「基礎教育」をめぐる議論の展開
(1)職業教育改善委員会の「審議経過報告」における問題意識
(2)産業教育教科調査委員会議の役割
(3)職業教育改善委員会の最終報告
(4)関係するアクターによる改善策
4.1978年学習指導要領改訂による「基礎・基本」の重視に関わる政策の具体化
(1)教育課程審議会による方針の確定
(2)1978年改訂学習指導要領策定の経緯とその内容
(3)「基礎・基本」重視の具体的な内容
(4)改訂学習指導要領への評価と対応
5.「基礎・基本」の重視に関する議論の背景
6.1970年代の高校職業教育政策の位置付け
第2節 「専門的」教育の再認識と情報化等への対応―1989年学習指導要領改訂
1.理産審における「専門的」教育の再認識と情報化等への着目
2.1989年学習指導要領改訂における「専門的」教育
小括

第2章 「専門性」の意味付けの変更から生徒の主体性を引き出す教育課程へ―スペシャリストへの道から「ものづくり」の公認まで
第1節 「専門性」の意味付けの変更と縮小再編下の工業科の教育課程―1999年学習指導要領改訂
1.工業高校をめぐる新たな状況
2.「専門性」の意味付けの変更と1999年学習指導要領改訂
第2節 具体的内容の欠如と次回改訂への課題の提起―2009年学習指導要領改訂
第3節 「ものづくり」の公認と「体系的・系統的な理解」への回帰―2018年学習指導要領改訂
小括

第3章 「生徒の実態重視の論理」に基づく教育課程の実施状況―単位数削減下での教育課程編成の弾力化による対応
第1節 教育課程編成例の作成者の交代と編成例の役割の低下―文部省から都道府県教育委員会と高校関係者へ
第2節 1970年改訂学習指導要領以降の機械科における教育課程の実施状況
1.教育課程全体の実施状況
2.普通教科の教科別の実施状況
3.普通教科の科目別の実施状況
1)理数系の教科 2)人文社会系の教科 3)その他の教科
4.機械科における専門科目の実施状況
5.教科外活動と「総合的な学習の時間」等の実施状況
第3節 1970年改訂学習指導要領以降の電気科における教育課程の実施状況
小括
補論 「教育課程表による集計結果」の妥当性についての確認(2)

第4章 「ものづくり」等を通じた教育課程の新たな展開―新たな「専門性」への模索
第1節 教育内容の絞り込み・指導方法の工夫と新たな「工業科の論理」
1.「ものづくり」という語の役割と具体的な内容
2.工業科における「ものづくり」とコンテスト等の役割
3.職業資格・技能検定の取得の役割と実態
4.インターンシップとデュアルシステム
5.「ものづくり」を通じた新たな「工業科の論理」と「専門性」
第2節 基礎学力の補填と大学等への進学希望者への対応
小括

第5章 工業科における教育課程の策定と実施における特徴―その固定性と柔軟性
1.学習指導要領、教育課程編成例及び実際に適用された教育課程の関係
2.普通教科と専門教科の関係―境界の固定性とそれぞれの内部における柔軟性
3.普通教科の教科別の単位数の推移及びそこでの教育課程編成例の役割
4.専門教科の科目別の開設率と単位数の推移及びそこでの教育課程編成例の役割
5.教育課程編成例の役割の変化
6.教育課程に関する政策過程における高校長等の役割
7.普通教科の意義・役割とその限界
8.専門教科の意義・役割―「基礎・基本」と「専門性」
小括

第Ⅰ部と第Ⅱ部のまとめ カリキュラムにおいて何が意図され、どのように実施されたのか

【第Ⅲ部】高校工業科における小学科の役割とその実態―なぜ多様化し、何が問題なのか

第1章 小学科に関する制度とそこでの選択―標準学科の役割と小学科の選択
第1節 小学科の設置状況の概要
第2節 小学科に関する制度の推移とその下での学校設置者と入学志願者による選択
1.小学科に関する制度と標準学科の変遷
2.小学科についての学校設置者と入学志願者による選択
小括
補論 小学科に関するデータについて

第2章 高度経済成長期からその後の停滞期における小学科の設置状況―多様化からその見直しへ
第1節 小学科の設置数と小学科の名称の種類の数の推移
1.小学科の設置数と小学科の名称の種類の数との関係
2.小学科に関する政策の推移
3.1951年から90年までの主要な小学科の設置状況
第2節 1951年から90年までの間に設置された小学科の分類と特徴
小括

第3章 「小学科の多様化」をめぐる政策過程とその帰結―多様化への過大な期待から教育課程編成の弾力化へ
第1節 小学科の多様化をめぐる政策過程
1.研究課題と方法
2.1960年代における工業科卒業者をめぐる状況
3.「小学科の多様化」が必要とされた事情・論理と政策手段
4.小学科の多様化政策の形成と実施をめぐる言説の変遷
1)第1期:勤労青少年の就学確保から高校職業教育への技能教育の位置付けへ
2)第2期:学科等のあり方を含む後期中等教育の多様化の政策課題化
3)第3期:職業教育等の多様化≒小学科の多様化への政策課題の焦点化
4)第4期:小学科多様化方針の事実上の撤回と教育課程編成の弾力化による対応へ
5.小学科多様化政策の論理・手段の変遷とその帰結
第2節 小学科の多様化の実態
小括

第4章 「特色ある学科・コース等」の設置の奨励と小学科の役割―生徒確保のための多様化と多様化批判への疑問
第1節 1980年代後半以降の小学科等の具体的な設置状況とその背景
1.小学科等の設置数とその名称の種類の数の推移
2.1990年代初め以降の主要な小学科等の設置状況
3.小学科等の設置数とその名称の種類の変化に見られる特徴
第2節 1985年から2015年までの間に設置された小学科等の分類と特徴
第3節 特色ある学科・コース等の必要性
第4節 「小学科の多様化」批判と小学科の役割
小括

第Ⅲ部のまとめ 小学科はなぜ多様化し、何が問題なのか

結びに代えて 高校工業教育がその機能を維持し続けることができた要因

参考資料/引用・参考文献/索引

■著者紹介:山田宏(やまだ・ひろし)1952年生、71年東京工業高等専門学校電気工学科中退、76年東京大学教育学部教育学科卒業、76年から2012年まで経済企画庁、国土庁、内閣府、通商産業省、臨時教育審議会事務局、参議院事務局、海外経済協力基金、総合研究開発機構で勤務、2023年一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了 博士(社会学)。 〔著書〕 『高専教育の発見―学歴社会から学習歴社会へ』(矢野眞和・濱中義隆・ 浅野敬一編、岩波書店、2018年、第6章担当)、『境界線の学校史戦後日本の学校化社会の周縁と周辺』(木村元編、東京大学出版会、2020年、第7章担当)

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