近代社会教育における権田保之助研究 娯楽論を中心として

著者:坂内 夏子

発行年月:2019年8月

価格:本体3,000円(税別)

ISBN:978-4-908926-63-1

体裁:A5判・206頁・並製・カバー装

近代社会教育における権田保之助研究 娯楽論を中心として

「民衆娯楽研究の第一人者」権田保之助 を「社会教育」の観点から読み直す。

大原社会問題研究所所員、文部省・厚生省専門委員嘱託として、関東大震災を挟み大正から昭和戦中期、数々の娯楽調査・社会調査(家計、労働、農村、学生、映画、月島・浅草等々)に関わり、今日に残る実証的研究・記録を残した。

「娯楽は本来「民衆主体」の生活創造としてある」
「「民衆娯楽」は権力が政策として方向付けるものではない」
「(震災からの)復興のバロメーターを民衆の娯楽要求に見る」

権田保之助の“仕事”への好案内。再読のために、初めて読むときに。多岐にわたる権田の著作群から、できるかぎり自身の用語・表現で語らせる形で構成し、権田の意図・真意を丁寧に辿った。

(本書のキーワード) 社会教育 社会調査 民衆大衆 労働(者) 社会主義 プロレタリアート・インテリゲンチャ 都市と地方・農村 職業工場 産業世相 娯楽・余暇・慰安 レクリエーション 生活創造 施設 活動写真 放送・ラジオ興行 寄席 流行歌 学校教育・制度 保健衛生 知識階級 文化主義 芸術・美学 伝承娯楽 青年・学生 子ども 家庭・家計生活享楽費 行政・政策・統制関東大震災 復興 イギリス ドイツ 戦時体制...

権田保之助(ごんだ・やすのすけ)
1887(明治20)年、東京生まれ。早稲田中学校で安部磯雄(社会主義者、社会運動・教育・政治家)の教えを受ける。在学中、日露開戦批判論を発表し放校となる。東京外国語学校独逸語学科を経て東京帝国大学文科大学哲学科美学専修修了。在学中より評論執筆、また諸種の社会調査に加わり重要な記録・著作を多数残した。
【主な調査・著作・活動】
1914 『活動写真の原理及応用』
1917 東京市活動写真調査(帝国教育会)
1918 東京市寄席興行調査(帝国教育会)。保健衛生調査(内務省保健衛生調査会)。月島調査(主査・高野岩三郎。労働者の衛生・生活状態・家計調査)
1920 文部省社会教育調査委員。倉敷紡績工場労働者娯楽調査(大原社研)
1921 活動写真説明者講習会講師(文部省)。浅草調査(大原社研)。東京帝国大学助手を依頼免、大原社会問題研究所研究員に。
   『民衆娯楽問題』、『美術工芸論』
1922 消費経済講習会講師(文部省)。娯楽・サービス業従事者調査
   『民衆娯楽の基調』
1923 〈関東大震災〉
   『娯楽業者の群』
1924 大原社研在外研究員として渡欧
1927 教育映画調査(文部省)
1930 映画企業の資本的構成調査(大原社研)。興行映画調査着手
1931 民衆娯楽調査(文部省)
   『民衆娯楽論』
1932 全国農山漁村娯楽状況調査。浅草における映画常設館、観客に関する調査
1935 民衆娯楽改善指導講習会
1938 学生娯楽問題調査
1939 日本大学芸術科講師、映画政策論を講義。日本厚生協会専門委員。労務管理調査委員会委員、演劇・映画・音楽等改善委員会委員(内閣)
1941 国民学校教科用映画検定委員(文部省)
   『国民娯楽の問題』
1942 文部省・厚生省専門委員(内閣)
1943 『娯楽教育の研究』
1946 日本放送協会常務理事。通信教育調査委員会委員(文部省)
1947 生活科学研究会委員(東京都)
1951(昭和26) 死去

目次(抄)

序論(先行研究:権田の人物史研究/文部省社会教育行政との関わり/権田の娯楽論の展開)

 第1章 美術工芸論と民衆娯楽の着想
第1節 美術工芸論
美術評論活動/美術工芸運動への注目/美術工芸論の構築
第2節 民衆娯楽問題認識
活動写真への注目/民衆娯楽の着想と形成
第3節 社会改造の視点
資本主義社会体制への問い―社会教育への関心―
社会像の模索/社会教育への注目

 第2章 学問の形成と視点
第1節 民衆文化論争における位置
論争の周辺/権田の主張
第2節 批判の姿勢
社会主義観/ウィリアム・モリス理解/民衆観/学校教育制度批判
第3節 概念主義への批判
文化主義への批判/知識階級への批判
第4節 学校万能主義への批判
知識偏重教育の批判/社会教育と学校教育/都会と地方の民衆娯楽
第5節 社会的事実追究の姿勢
民衆娯楽の諸相/権田の世相観
第6節 民衆教育構想
民衆教育論/社会的側面/大衆娯楽と民衆教育

 第3章 娯楽論の展開
第1節 民衆娯楽論
「娯楽なき人生」の体験/娯楽三定説の批判的検討
「生活創造としての娯楽」の提唱/生活像の模索
第2節 国民娯楽論
民衆娯楽から国民娯楽への過渡/国民娯楽観/余暇観・労働観
大衆性と指導性の関係/民衆娯楽の解体

 第4章 娯楽問題の追究と「娯楽公営化」構想
第1節 農村娯楽問題への注目
地方への関心/農村娯楽への問題認識/地方文化の追究
第2節 労働者娯楽問題への注目
労働者への関心/労働者娯楽に対する問題認識
労働者のための家庭娯楽論
第3節 学生娯楽問題への注目
学生娯楽問題調査への関わり/青年と民衆娯楽
青年学生娯楽の意義
第4節 民衆生活における娯楽の成立
民衆娯楽対策/事実としての民衆娯楽
第5節 娯楽至上主義の視点
娯楽に関する問題意識/娯楽の普及
第6節 民衆娯楽問題と社会教育
第7節 「娯楽公営化」構想
社会対策と映画/教育映画

結論(社会教育史における権田の娯楽論/まとめ)

(資料)権田保之助略年譜・著書・参考文献
※詳細な著作リスト
索引

【著者紹介】早稲田大学教育・総合科学学術院教授。博士(教育学)。研究分野:社会教育・生涯学習。

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