江戸時代庶民文庫 89巻 古方便覧ほか

第2期第6回(全5巻・86~90巻)配本所収

解題者:小泉 吉永

発行年月:2020年11月

価格:17,600円(本体16,000円+税10%)

ISBN:978-4-86688-089-1

体裁:A5判・320頁・上製・クロス装

特記:分売可

江戸時代庶民文庫 89巻 古方便覧ほか

【ジャンル】書名(主な作者/刊行年など)
【医学・看護】
○古方便覧(六角重任/天明2年)
○賜民薬方(阿部正興/文化8年)
○看病手引歌(霊応/文政10年)
○精養要略(元玄堂/天保10年)
○とし玉(佐藤鶴城/嘉永5年)
○〈長生法附録〉救急法(石黒忠悳/明治6年)

○古方便覧(六角重任/天明2年)
『傷寒論』や『金匱要略』の薬方を基本にしながらも、日本人に適した処方や実践的な治療を目指した古方派を代表する処方集。上巻は「桂枝湯」から「土瓜根散」までの97方、下巻は「桃核承気湯」から「蛇牀(床)子散」までの90方を系統的に並べ、薬方毎の調合法・効能・服用上の諸注意などを記す。下巻末には種々の腹部の状態を図示した「附録腹候図」を掲げる。作者は、江戸中・後期の漢方医学に多大な影響を及ぼした吉益東洞の弟子。
○賜民薬方(阿部正興/文化8年)
「大人小児急病、或は急難を救ひ治する秘方」を述べた民間療法の小冊子。大人から子供までが急病・急難に直面した時の基本的な救急法を列挙する。鼠や猫による咬傷、銭の喉詰、眼病、食あたり、食滞(食もたれ)、火傷、刺し傷、漆かぶれ、魚骨(咽頭)異物、蛇による咬傷、水難事故、気絶、捻挫、発熱、小児五疳(疳の虫)、寸白(寄生虫)、鼻血、縊死未遂、一酸化炭素中毒までの対処法を記す。
○看病手引歌(霊応/文政10年)
表紙とも七丁の小冊子。七五調の和讃形式で、看病の意義や具体的な看病の方法や諸注意を述べた教訓書。見返しに「八福田」(敬い仕えると福徳が得られる仏・聖人・和尚・闍梨(阿闍梨)・僧・父・母・病人の八つ)を掲げる。臨終に際して病者に念仏を勧めるなど、臨終作法書の面も持つ。
○精養要略(元玄堂/天保10年)
編者の師である桜井祐之(「すけゆき」とも)に学んだ「医道之真理」を「治療と養生の道」と「病人看病人の心得」の二章に分けて説いた小冊子。例えば鳥・獣・虫などは
本能的に「其薬を知り、喰ふて病を癒す」が、これが天地自然であり、いかに病名が増えようとも本来「万病一毒」であり、病毒を去るには「汗・吐・下」(発汗・嘔吐・下痢)の三方以外にないとする。
○とし玉(佐藤鶴城/嘉永5年)
医師のいない田舎者でも、薬を待たず、急病にも自ら対処して辛い境遇に陥ることなく、天下の人々が共に健やかに新年を迎えるべく、養生や長寿の秘訣をささやかな一枚刷りとして毎年配布してきたものを合綴した小冊子。
○〈長生法附録〉救急法(石黒忠悳/明治6年)
「救病療法并貯薬用法」「眩暈・卒倒」「消化不良并に飲留」「下利(痢)」「便秘」「嘔吐」「腹痛」「霍乱」「中食」「感冒」「瘧病」「蛔蟲」「截傷」「打撲」「火傷」「咬傷」「重病中の失神」について記した小冊子。日本の医道が大貴己命と少名彦名命の二柱の神に始まることや、文明開化後の医学校の制度と医者の現状に触れ、このような日本の医療の現状に多少の関心を持ちつつ、「急場用心の薬」を家庭に備え付けるべきことなどを助言したうえで、日頃の備えで急場しのぎが可能な、前述各項の救急法を簡潔明瞭に説く。

解題者紹介:往来物研究家、往来物倶楽部代表、立正大学・人間総合科学大学非常勤講師、学術博士。(原版作者は各巻参照)

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