メーテルリンク翻訳作品年表

 榊原貴教 作成


本年表は、『翻訳と歴史』第16号に掲載されたものです。
また、メーテルリンクの明治期の翻訳作品をご覧になりたい方は、
「明治期翻訳文学全集《新聞雑誌編》」 第49巻 『メーテルリンク集』をご利用ください。

メーテルリンクは明治35年から昭和の初期まで、日本の文壇・劇壇を風靡した。そして、ストリンドベリと同じく、その後
は火が消えたように忘れさられた文学者である。ただストリンドベリと異なるのは、昭和20年以降も、幸福の代名詞の
ようになった『青い鳥』が児童文学関係者によって、繰り返し物語化され、また児童劇として上演されてその虚名を留め
ていることだろう。
主要な戯曲やその詩が日本で忘却されたのは、第二次世界大戦後ではなく、すでに昭和初期から始まっていたらしく、
昭和16年に刊行されたノーベル賞文学叢書の中で、『アグラヴェーヌとセリセツト』(訳名「二人の女」)の訳者大田咲太
郎がその序文で次のように記している。
〈近ごろの若い人たちはメーテルリンクの作品を餘り讀んでゐないやうであるが、嘗つては流行児として爭つて飜譯さ
れ、爭つて讀まれたものである。ある時期にはトルストイ、イブセンなどと並んで、世界讀書界の寵児であつた。〉
この言葉を裏付けるように、この翻訳はシェンキエウィッチの作品と合冊され、本の書名・奥付もシェンキエウィッチの
『青春の日』で代表表示されている。
「流行児として爭つて飜譯され」ていた時代は後掲の年表を一瞥すれば、明治末から大正期であったが、当時の劇界
のリーダーであった島村抱月は大正2年、その訳著『モンナワ゛ンナ』の序文でこのように記している。
〈イプセンが死んで以来の歐州劇壇の最高地位は誰れに與へれるか。ハウプトマン氏か、ショー氏か、メーテルリンク
氏か。今日の所では少くとも其の作風に新機軸のある點で、メーテルリンク氏が第一の候補者に推される。〉
また、その雰囲気を伝える資料として、大正4年の早稲田大学文科卒業生の卒論テーマの一覧が『早稲田文学』(大正
4年8月号)の「文芸教学界消息」欄に載っている。同年の文科(哲学科と文学科)卒業生は16名おり、その論文題目と
氏名が列記されている。卒論に取り上げられた文学者の内で、最も点数が多いのはやはりトルストイで、4名いる。次
に多いのはストリンドベリの3名。メーテルリンクは次の2名が卒論題目として取り上げた。
 村瀬秀静「メエテルリンクの思想研究」
 岡規矩治「メエテルリンクの生死観」
同年の卒業論文の中では、他に宮島新三郎がモーパッサンを、保高徳蔵がトルストイを、西條八十がシングを取上
げ、青野季吉が「芸術を生む力」というテーマで、鷲尾浩が「サンタヤナ美学研究」というテーマで提出している。
鷲尾浩は卒論ではメーテルリンクを取り上げなかったが、大正9年から『マーテルリンク全集』全8卷を個人訳した人で
ある。
この消息から、トルストイ、ストリンドベリ、メーテルリンクは、当時の早稲田大学の学生の間では興味をそそる文学者
であったことが知れる。
いま名前を掲げた3名のうち、トルストイの作品のみが生き延び、他の2人はなぜ忘却されてしまったのか。ストリンドベ
リとメーテルリンクは、時代の雰囲気の中でのみ創造活動に参与し得た文学者であったのだろうか。2人の作品は、日
本における文学受容の社会史を考察する上で、興味ある対象と考える。
この感想を述べるに当たって、児童文学界における『青い鳥』の盛況を意識的に無視しているが、その理由を少し述べ
ておく。
『青い鳥』の訳者たちの解説を読むと、ほとんどが幸福は私たちの身近にあると述べている。昭和20年以降の『青い
鳥』の翻訳を国立国会図書館の蔵書で検索すると60点余りあり、そのほとんどが児童向きの物語か絵本である。そし
てそのほとんどの翻案態度は、おそらく私が見た解説と視点が変わらない「幸福は身近にある」ことを諭す物語となっ
ているのではないかと推測する。
メーテルリンクは果たして、そのような道徳的な言説を提示するために、チルチルとミチルにさまざまな遍歴をさせたの
であろうか。夜の国まで見なければなりませんかと言わせたのだろうか。無垢な精神は、さまざまな遍歴を経ることによ
って昇華されていく。その遍歴の経験を携えたもののみが、身近な幸福を発見できる資質を獲得するのではないだろう
か。
現代日本の「旅」という概念が、旅行業者によって美景や記念物を視察する目的のみに再定義されてしまったが、芭蕉
の旅を持ち出さなくとも、中世、近世の人々の旅を想起すれば足りるが、目的地に着く途次の経験こそが、旅の経験で
あった。グリムのメルヒェンも、遍歴の経験がメイン・テーマの一つとなっている。
新幹線の車中や、観光バスの車中における人々の交歓は楽しいものであるが、現代の旅においてはその旅の経験は
隔離され、保護されてしまっている。旅は、単に目的地の視察に変換され、苦難の過程は、交通の混雑と事故の余波く
らいに限定されてしまっている。「道」は速やかに通過する場所として整備されてしまった。
『青い鳥』の遍歴は、飛行機や新幹線やバスの路線と見做され、目的地の「身近な幸福」のみが、大きく照らし出されて
しまっている。この意味で、日本におけるメーテルリンクの受容は、語学的な概念とは異なる誤訳の歴史であったのか
もしれない。
この誤訳された『青い鳥』の視点からメーテルリンクの戯曲や詩作品を鑑賞すれば、神秘主義の思想家―近代合理主
義に駆逐され、現代においては古びてしまったもの―として、現代日本で忘却されていったのは肯ける事態かもしれな
い。
私はメーテルリンクの再評価を提起しようとしているのではない。忘却された文学者の位置から、日本という地域社会
を照射すれば、現代日本人の意識がより鮮やかに浮き出すのではないかと考えている。そのための基礎調査として、
メーテルリンクの翻訳作品年表を作成しておきたいと考えている。(榊原貴教)



モーリス・メーテルリンク 
Maurice Maeterlinck (1962.8.29〜1949.5.6)

ベルギーの劇作家、詩人。フランドルのガンの地主の子として生れる。『集英社世界文学大事典』によれば(酒井三喜
執筆)、「当時ガンは、かつての繁栄と活気を失い、暗い幻想の雰囲気が古い建物と運河を包む〈死都〉の趣があった」
という。また「当時のフランドルのブルジョア層はフランス語を日常語」としていたという。スウェーデンの神秘主義者スウ
ェーデンボルイなどに惹かれて詩作をはじめ、その作品はベルギー系象徴派と評価されている。フランスの女優ジョル
ジエット・ルブランと出会い、1987年にフランス移住を決意するが、後年は哲学的エッセーや博物学の研究と観察によ
る著作が多い。この時期の啓蒙的演劇の代表作が『青い鳥』であった。
メーテルリンクの表記は、略歴で利用した『集英社世界文学大事典』ではモーリス・メーテルランクとなっている。『早稲
田文学』大正1年11月号の秋田雨雀の論文題名は「モオリス・マアテルリンク」、森鴎外・上田敏、正宗白鳥もマアテル
リンク、大塚楠緒子、栗原古城、小川龍彦らはマーテルリンク、松枝盤壑はメーテレンクとゆれがある。最も多く使用さ
れているのが、メーテルリンクであったので、この表記を採用した。(榊原)
以下に、明治35年から昭和17年までの翻訳作品を一覧する。【*印は単行本】



明治35年(1902)
 1月  をさな児の最期〔戯曲〕 大塚楠緒子訳 女学世界(〜2月)
      [タンタジルの死]
 10月  平和〔戯曲〕 田山花袋訳 太陽 [室内]
 11月  メーテルリンクの劇詩「ペリアスとメリサンダ」(梗概) 正宗白鳥訳 新声 [ペレアスとメリザンド]

明治36年(1903)
 6月  マアテルリンクの脚本〔モンナ・ワンナの梗概〕 森鴎外訳 心の花 [モンナ・ヴァンナ]
 8月  「モンナ、ワンナ」梗概〔戯曲〕 森鴎外訳 歌舞伎(〜12月) [モンナ・ヴァンナ](『心の花』の再録) 
 8月  をさな児の最期 大塚楠緒子訳 心の花 [タンタジルの死](『女学世界』の再録)
 9月 *マアテルリンク物語(通俗世界文学第7編) 正宗白鳥編 冨山房
      [マレイン王女/ペリアスとメリサンダ/侵入者/群盲](梗概)
 9月  盲人 小山内薫訳 万年草 [群盲]
 11月  盲目〔戯曲〕 中島孤島訳 太陽 [群盲]
 12月  マレーン姫(泰西名著梗概) 長谷川天溪訳 文芸倶楽部 [マレーヌ姫]

明治37年(1904)
2月  痴情〔戯曲〕 桐生悠々訳 新小説 [ペレアスとメリザンド]
3月  モンナ・ヴァンナ(泰西名著梗概) 長谷川天渓訳 文芸倶楽部 [モンナ・ヴァンナ]

明治38年(1905)
 1月  モンナワ゛ンナ 佐藤紅緑訳 新潮 [モンナ・ヴァンナ]
 9月  西班牙兵 田山花袋訳 太陽 [幼時虐殺]
 11月  不朽の愛〔戯曲〕 高須梅渓訳 太陽(〜12月) [モンナ・ヴァンナ]
 11月  モンナ、ワ゛ンナ〔戯曲〕 佐藤紅緑訳 文芸界 [モンナ・ヴァンナ]

明治39年(1906)
 1月 *タンタジルの最期(『晴小袖』所収) 大塚楠緒子訳 隆文館 [タンタジルの死]
 2月 *脚本モンナ・ワンナ 山岸荷葉訳 春陽堂 [モンナ・ヴァンナ] 【明治座で上演】
 2月  沈黙 西村酔夢訳 太陽
 3月  正義の不可思議 上田敏訳 芸苑(〜9月)
 5月 *神秘論 西村真治訳 福岡書店・岡村書店
 6月  近代の戯曲 平野万里訳 明星
 8月  虐殺 徳田秋江訳 新古文林 [幼児虐殺]
 11月  ひとるたま〔詩〕 上田敏訳 心の花

明治40年(1907)
 11月  マアテルリンク(温室/心)〔詩〕 上田敏訳 哲学雑誌 [温室]

明治41年(1908)
 1月  暗影(温室/火取玉/心/愁の室)〔詩〕 上田敏訳 明星 [温室]
 1月  莟の花〔戯曲〕 千葉掬香訳 明星(〜4月) [ペレアスとメリザンド]
 3月  盲目者(海外名著梗概) SM生 新潮 [群盲]
 4月  時のうれひ(絶望)〔詩〕 折竹蓼峯訳 文庫 [温室]
 7月  女 土岐哀果訳 女子文壇
 10月  畏怖〔詩〕 内藤濯訳 帝国文学

明治42年(1909)
 1月  タンタジールの夢 小川未明訳 早稲田文学 [タンタジルの死]
 2月  温室(祈祷/たましひ/病院/めつき)〔詩〕 上田敏訳 スバル [温室]
 3月  冬の希望〔詩〕 広瀬青波訳 アカネ [温室]
 4月  奇蹟〔戯曲〕 森鴎外訳 歌舞伎(〜5月) [聖アントニウスの奇蹟]
 4月  内部(泰西名著梗概) SM生訳 新潮 [室内]

明治43年(1910)
 1月 *奇蹟(『続一幕物』所収) 森鴎外訳  西本波太(易風社) [聖アントニウスの奇蹟]
 4月 闖入者 茅野蕭々訳 早稲田文学 [忍び入る者]
 5月  青い鳥 金星草訳 スバル [青い鳥]
 6月  温室より(影/午後/室のおもひ/疲労) 内藤濯訳 帝国文学 [温室]
 6月 *無辜(『花袋叢書』所収) 田山花袋訳 博文館 (「西班牙兵」の改題)[幼時虐殺]
 10月  「青い鳥」の梗概 森ほのほ訳 歌舞伎(〜12月) [青い鳥]
 10月  盲目〔戯曲〕 薮与太郎訳 劇と詩 [群盲]
 10月  Quinze Chansonsより〔詩〕 後藤末雄訳 帝国文学 [十五の歌]

明治44年(1911)
 1月  家の内 一宮栄訳 芸文 [室内]
 4月  ビアトリス尼の梗概 田中雨村訳 白樺 [ベアトリース尼]
 5月  七人の病める王女〔戯曲〕 森ほのほ訳 歌舞伎 [七人の王女]
 8月  奇蹟 冬青樹訳 演芸画報 [聖アントワーヌの奇蹟]
 8月  嬰児虐殺 一宮栄訳 芸文 [幼児虐殺]
 8月 *青い鳥〔戯曲〕 島田元麿・東草水訳 実業之日本社 [青い鳥]
 11月  日常生活の悲痛 和気律訳 帝国文学
 12月  室内〔戯曲〕 仲木貞一訳 劇と詩 [室内]
 12月  タンタジルの死〔戯曲〕 金子範二訳 太陽 [タンタジルの死]
 12月  室内 北沢貞造訳 帝国文学 [室内]

明治45年(1912)
 3月  ペレアスとメリサンド〔戯曲〕 出隆訳 シレエネ [ペレアスとメリザンド]
 3月  死 山本禿坪訳 スバル(〜4月) [死]
 3月  タンタヂールの死〔戯曲〕 灰野庄平訳 歌舞伎 [タンタジルの死]
 4月  ペレアスとメリサンド シレエネ
 4月  タンタヂイルの死〔戯曲〕 小山内薫訳 三田文学 [タンタジルの死](自由劇場第六回試演用台帳)
 4月  七人の姫〔戯曲〕 北沢貞造訳 帝国文学 [七人の王女]
 6月  過去 竹友藻風訳 芸文
 6月  室内〔戯曲〕 内藤濯訳 六合雑誌 [室内]
 7月  運命 内藤濯訳 六合雑誌

大正1年(1912)
 9月  室の内〔戯曲〕 満壽治重訳 とりで〔斉藤昌三「西洋文学翻訳年表」による〕
 11月  アラヂンとバロミイド〔戯曲〕 灰野庄平訳 スバル [アラジンとパロミード]
 11月  マラデヌーとバロミード〔戯曲〕 森ほのほ訳 歌舞伎 [アラジンとパロミード]
 11月  ペレアス、メリサンド〔戯曲〕 竹友藻風訳  芸文 [ペレアスとメリザンド]
 11月  ペリアスとメリサンド〔戯曲〕 島村抱月訳 早稲田文学 [ペレアスとメリザンド]
 11月  マグダラのマリア〔戯曲〕 三上白夜訳 新人(〜2年6月)

大正2年(1913)
 1月  マレエヌ姫〔戯曲〕 内藤濯訳 六合雑誌(〜5月) [マレーヌ姫]
 1月  アグラヴエヌとセリセツト〔戯曲〕 秋田雨雀訳 早稲田文学 [アグラヴェーヌとセリセット]
 1月  内在の美 折竹蓼峯訳 六合雑誌 [貧者の宝]
 1月  埋もれたる宮より―過去 加藤一夫訳 六合雑誌
 1月  マリイ・マドレエヌ〔戯曲〕 吉田絃二郎訳 六合雑誌(〜2月) [マグダラのマリア]
 2月  アグラァヴェヌとセリセッテ〔戯曲〕 志筑岩雄訳 樹陰 〔『詩歌』広告〕 
 2月  尼僧ペアトリース〔戯曲〕 矢口達訳 聖杯(〜5月) [ベアトリース尼]
 2月 *タンタジイルの死(『近代劇五曲』) 小山内薫訳 大日本図書
 2月 *智慧と運命 大谷繞石訳 南北社
 3月 *七人の姫(『邦訳近代文学』) 野上臼川訳 尚文堂
 4月  アラデインとパロミデス〔戯曲〕 野上臼川訳 詩歌(〜5月) [アラジンとパロミード]
 4月  侵し入るもの〔戯曲〕 伊豆四郎訳 とりで〔斉藤昌三「西洋文学翻訳年表」による〕
 4月  失明者〔戯曲〕 木村荘八訳 とりで〔斉藤昌三による〕
 4月  青い鳥〔戯曲〕 桜山歌次訳 とりで〔斉藤昌三による〕
 4月  七王女〔戯曲〕 島村抱月訳 早稲田文学 [七人の王女]
 4月  心の葉〔詩〕 与謝野寛訳 帝国文学
 5月  光を失ひし時〔詩〕 藤井夏人訳 新人
 5月  青い鳥 斉藤寅一訳 スバル
 5月 *ペリアスとメリサンド・七王女 島村抱月訳 近代脚本叢書3 現代社
 7月  祈祷〔詩〕 藤井夏人訳 新人
 7月  モンナ・ワ゛ンナ〔戯曲〕 島村抱月訳 早稲田文学(〜9月)
 8月  虐殺 毅一訳 とりで〔中野愚堂「明治大正翻訳文学総覧」による〕
 8月  アーリアスとブフリウ〔戯曲〕 深甫訳 とりで〔中野愚堂による〕
 9月 *モンナ・ワ゛ンナ〔戯曲〕 島村抱月訳 南北社
      [モンナ・ワ゛ンナ(島村抱月訳)、内部(秋田雨雀訳)] 【有楽座で上演】
 9月 *蜜蜂の生活 岡本清逸訳 東亜堂書房
 12月 *青い鳥 若月紫蘭訳(上下) 近代脚本叢書10・11 現代社 〔英訳本から訳〕
 12月 *青い鳥(『近代劇物語』1 所収) 荒木秀一訳 大日本図書

大正3年(1914)
 3月  盲ひたる姉妹ふたり〔詩〕 竹友藻風訳 心の花 [十二の歌]
 4月  日常生活中の悲劇〔評論〕 吉江孤雁訳 仮面
 4月  アリアーヌと青髯 木村幹訳 自画像
 4月  La vie profonde(ラ・ヴィ・プロフォンド) 豊島與志雄訳 自画像
 4月  魂のめざめ 高月藹之助訳 新潮
 4月  沈黙 高月靄之助訳 早稲田文学
 5月  星〔評論〕 吉江孤雁訳 仮面
 6月 *モンナ・ワ゛ンナ 村上静人訳 アカギ叢書18 赤城正蔵
 7月  『温室』より〔詩〕 飯田敏雄訳 六合雑誌 [病院、『温室』]
 7月 *タンタヂールの死、附・群盲 小島春潮訳 名著叢書2 日吉堂本店 [タンタヂールの死、群盲]
 8月  微笑と浪 吉江孤雁訳 風景 〔『水甕』広告〕
 8月  深刻な生活 吉江孤雁訳 仮面
 8月 *モナワ゛ナ 岩野泡鳴訳 エッセンスシリーズ12 青年学芸社 [モンナ・ヴァンナ]
 8月 *モンナワ゛ンナ(『近代劇物語』2) 荒木秀一訳 大日本図書
 9月  ベアトリス尼〔戯曲〕 盤壑生訳 新女界(〜12月) [ベアトリース尼]
 9月 *青い鳥 若月紫蘭訳(文芸社編輯部編) 世界文芸叢書7 文芸社 →昭和4年10月の項参照
 11月 *アグラヴエヌとセリセツト 秋田雨雀訳 パンテオン叢書4 金桜堂書店 16p 155p
      [アグラヴェーヌとセリセット]
 12月  王女マレーヌ〔戯曲〕 大江蕃太郎訳 新人(〜4年5月) [マレーヌ姫]

大正4年(1915)
 1月 *貧者の宝 吉江孤雁訳 新潮文庫 新潮社
 4月 *青い鳥〔戯曲〕 若月紫蘭訳 薔薇叢書2 植竹書院 〔仏語版から訳〕。
 10月 動かぬ「時」〔詩〕 小林進訳 新人 [動かぬ「時」、反映、The Fevered Soul]

大正5年(1916)
 3月 罪なき者の虐殺 北沢貞造訳 帝国文学 [幼時虐殺]
 4月 *死後は如何 栗原古城訳 玄黄社 [「死」の増補版「永久の生」]
 9月 *万有の神秘 栗原古城訳 玄黄社 [埋もれた殿堂]

大正6年(1917)
 2月  エミール・ヴェルアーレン 訳者不記 読売新聞(21日)
 7月  ヒロイズム 木村壮八訳 白樺 
 8月  「難破の残片」より 木村壮八訳 白樺(〜9月)
 8月  冬をねがえる〔詩〕 曾野簡治訳 六合雑誌
 10月 *メエテルリンク傑作集 村上静人訳 泰西傑作集5 佐藤出版部
      [侵入者、アクラVエヌとセリセツト、青い鳥、モンナワ゛ンナ、群盲、室内]

大正7年(1918)
 5月  アラデインとバロミイド 二階堂真珠訳 六合雑誌
 7月  吾々の社会的義務 木村荘太訳 新しき村 〔『白樺』広告による〕
 11月  「一兵士の死」、他四篇 木村荘太訳 白樺
      [一兵士の死、運命の時、伊太利にて、ツキヂデスを再読して、戦時の超自然的交通]

大正8年(1919)
 1月  エヂス・カヴエル、他参篇 木村荘太訳 白樺
     [エヂス・カヴエル、死者の生命、戦争の予言者、地の意志、「彼岸の光」より]
 2月  死者は死せず 木村荘太訳 白樺 [「彼岸の光」より]
 3月  波瀾の為に、他一篇 木村荘太訳 白樺 [波瀾のために、戦争が終つた時、「彼岸の光」より]
 5月 *霊智と運命 栗原古城訳 玄黄社
 10月 *彼岸の光 木村荘太訳 天祐社
      [勝利の後、アルベルト王、質にする都市、四つの都市を救ふために、祖国のために一、ヒロイズム、祖国の
ために、祖国のために三、白耳義の国旗祭日、一兵士の死、運命の時、伊太利にて、ツキヂデスを再読して、死者は
死せず、追悼の辞、戦時の超自然的交通、エデテス・カヴェル、死者の生命、戦争の予言者、地の意志、波蘭のため
に、戦争が終つた時]
 12月 *新訳絵入世界童話宝玉集 楠山正雄編 模範家庭文庫 冨山房
      [畑中圭一「宮崎最勝と『青い鳥のをしへ』」による]

大正9年(1920)
 1月 メリー・マグダレーン〔戯曲〕 藤原菫子訳 六合雑誌(〜12月) 〔第1回表題「マグタラのマリア」〕
 3月 *マグダラのマリア 和気律次郎訳 玄文社
 3月 *青い鳥 外八篇 楠山正雄訳 近代劇選集1 新潮社 [群盲、青い鳥] 【有楽座で上演】
 7月 *未知の賓客 生方徹誠訳 南北社
 9月 *永遠の生命―霊魂不滅新論 高田元三郎訳 太陽堂
 12月 *私の犬 灰野庄平訳 玄文社
 ☆月 *花の智慧と蘭 尾沢慶忠訳 洛陽堂
      [花の智慧、香料(メーテルリンク)、蘭の花の受精(ダーウィン)]

マーテルリンク全集(平成1年5月、本の友社復刻)
大正9年12月 *マーテルリンク全集1 鷲尾浩(雨工)訳 冬夏社 [貧者の宝、ノフアリス、エマースン、智慧と運命]

大正10年4月 *マーテルリンク全集2 鷲尾浩(雨工)訳 冬夏社 [山道、死後の生活、蜜蜂の生活]

大正10年5月 *マーテルリンク全集3 鷲尾浩(雨工)訳 冬夏社 [埋れたる殿堂、人生と花、二重の園]

大正9年12月 *マーテルリンク全集4 鷲尾浩(雨工)訳 冬夏社 [マレエヌ姫、アグラベイヌとセリセツト、ペアレスと
メリサンド、群盲、七王女、タンタヂイルの死、ベアトリース尼]

大正9年12月 *マーテルリンク全集5 鷲尾浩(雨工)訳 冬夏社 「マグダラのマリヤ、闖入者、青い鳥、アラヂンと
パロミイド、内部、聖徒アントニユスの奇蹟、婚約」

大正9年7月 *マーテルリンク全集6 鷲尾浩(雨工)訳 冬夏社 [未知の賓客、小児虐殺、彼岸の死]

大正11年2月 *マーテルリンク全集7 鷲尾浩(雨工)訳 冬夏社 [モンテ・@ンナ、ジョアイゼル、スチルモンド市長、
ルイスブローク、詩集(温室、祈り、倦怠の家、誘惑、鐘形硝子器、貧しき捧物、心の葉、熱にかゝれる魂、霊魂、倦
怠、疲れたる狩猟、情熱、祈り、動かぬ時間、白き鳥、病院、夜の祈り、冬の欲望、、アーメン、潜水器、十五の唄、水
草池、燃える、瞑想、幻影、祈り、瞥見、お籠り、午後、霊魂、目論見、接触、夜、『温室』『十五の唄』より)]

大正11年6月 *マーテルリンク全集8 冬夏社 [マーテルリンクの思想芸術の解説(吉江孤雁)、モーリス・マーテル
リンク評伝(1)(2)]

大正10年(1921)
 3月 *婚約 小川龍彦訳 聚英閣
 6月 *人生と草花 土居通彦訳 杜翁紀念文庫8 杜翁全集刊行会 [昔時流行した花、人生と草花]
 6月 *ジョアゼル 二階堂真寿訳 聚英閣 [ジヨアゼル、アラデインとパロミイド]
 10月  蜜蜂の憤怒 多加美佐葉良年訳 三田評論
 12月 *青い鳥のをしへ 宮崎最勝訳・栗原古城補 青鳥会出版部

大正11年(1922)
 2月 *スチルモンドの市長(外三ツ) 山村巍訳 文泉堂書店
     [スチルモンドの市長、アルジアンとバーブ・ブリュー―一名空しき解放、闖入者、ベアトリース尼]
 6月 *メエテルリンク童話集 西川勉訳 真珠書房
     [尼の身替り(ベアトリース)、犬(私の犬)、青髯爺さん(アルディンと青髯子)、十二人の盲人(群盲)、青い鳥]
 10月 *青い鳥 楠山正雄訳 泰西戯曲選集2 新潮社 【有楽座で上演】
 11月  青い鳥(有楽座舞台協会所演芝居見たまゝ) 榎十二郎訳 演芸画報
 11月 婚約〔戯曲〕 小川龍彦訳 白樺(〜12年1月)

大正12年(1923)
 2月 *許婚 安藤勝一郎訳 冨山房
 2月 *近代劇の表現と認識 高瀬毅訳 黎明閣
     [近代劇の表現と認識、小犬について、機会の殿堂、自働車にて、剣の讃美、蜜蜂の憤怒、普通選挙権、春の
みなもと、花と王冠、田園の花、菊、昔の花、誠実といふこと、婦人の肖像、橄欖の梢]
4月 *仏及南欧篇1 近代劇大系10 近代劇大系刊行会 [群盲、アグラヴエヌとセリセツト(神絢一訳)、闖入者(茅
野蕭々訳)、タンタジールの死(灰野庄平訳)、ペレアスとメリサンド(小林龍雄訳)、モンナ・ワ゛ンナ(山内義雄訳)、青
い鳥(楠山正雄訳)]
 5月 *生と死 水野葉舟訳 心霊問題叢書2 新光社 [死、まだ知られてゐない賓客]
 8月 *タンタヂールの死 小島春潮訳 泰西傑作叢書2 集栄館
     [タンタヂールの死、群盲(メーテルリンク)、幽霊(イプセン)]

大正13年(1924)
 9月 *青い鳥 島田元麿・東草水訳 金星堂児童部
 12月 *青い鳥 伊藤豊訳 世界文芸物語叢書3 文教書院 (大阪府立国際児童文学館目録による)
 12月 *青い鳥 谷口武訳 児童図書館叢書 玉川学園出版部
 12月 *青い鳥 近藤宗男訳 児童図書館叢書 イデア書院
 12月 *童話劇篇2(世界童話大系20) 世界童話大系刊行会
      [青い鳥(楠山正雄訳)、許婚(安藤勝一郎訳)、尼僧ベアトリス、アリアーヌと青髯(岡野馨訳)]

大正14年(1925)
 7月 *モンナ・ワ゛ンナ 山内義雄訳 泰西戯曲選集11 新潮社 [モンナ・ワ゛ンナ、闖入者]
 9月 *青い鳥 畑喜代司訳 泰西名作児童文学大系2 文明社
 11月 *尼僧の懴悔(宗教劇) 宮崎小八郎訳 同行社
      [尼僧の懴悔(メーテルリンク)、百卒長の懴悔(ケネディ)]
 12月 *マレエヌ姫 山内義雄訳 泰西戯曲選集14 新潮社

大正15年(1926)
 2月 *メーテルリンク童話 奥野庄太郎訳 学習室文庫 中文館書店 (大阪府立国際児童文学館目録による)
 2月 *青い鳥〔戯曲〕 楠山正雄訳 画とお話の本6 冨山房
 2月 *青い鳥外四篇 伊達寛訳 文教書院 [畑中圭一による]
 2月 *青い鳥(上下) 若月紫蘭訳 近代脚本叢書7・8(〜3月) 第百書房 [畑中圭一による]
 6月 *青い鳥 大木雄三訳 世界少年少女名著大系23 金の星社

昭和2年(1927)
 3月 *青い鳥 布施延雄訳 世界文豪代表作全集18 世界文豪代表作全集刊行会
      [青い鳥、婚約、群盲、ペレアスとメリザンド、アグラヴェヌとセリセット、モンナ・ヴァンナ]
 6月 *青い鳥・ペレアスとメリサンド 河原万吉訳 万有文庫8 万有文庫刊行会
      [青い鳥、ペレアスとメリサンド、七王女]
 10月 *仏蘭西篇(『近代劇全集』24) 第一書房
      [タンタヂイルの死、ペレアスとメリザンド、潜み入る者(堀口大学訳)、部屋の中(内藤濯訳)]
 10月 *青い鳥外二篇 学級家庭文庫7 九段書房 [畑中圭一による]
 12月 *世界文学全集31 新潮社
      [モンナ・ワ゛ンナ、闖入者(山内義雄訳)、ペレアスとメリザント(小林龍雄訳)]

昭和3年(1928)
 7月 *メーテルリング集 河合逸二訳 袖珍世界文学叢書8 中央出版社
      [モンナ・ワ゛ンナ、青い鳥、侵入者、タンタジールの死、ペレアスとメリサンド]
 9月 *青い鳥 菊池寛訳 小学生全集75 興文社・文藝春秋社
 10月 *白耳義・和蘭近代劇集・白耳義・和蘭篇 世界戯曲全集36 近代社(世界戯曲全集刊行会)
      [群盲、タンタジイルの死(小山内薫訳)、アグラヴェヌとセリセット(神絢一訳)、モンナ・ヴァンナ(山内義雄
訳)、青い鳥(楠山正雄訳)]
 11月 *メーテルリンクの青い鳥 寺川紫江訳 日本児童文庫17 日本出版社 [畑中圭一による]

昭和4年(1929)
 6月 *青い鳥 若月紫蘭訳 岩波文庫 岩波書店
 10月 *青い鳥 若月紫蘭訳(文芸社編輯部編) 世界文芸叢書7 文芸社
 4月 *抱月全集4 島村抱月訳 博文館 [ペレアスとメリサンド、七王女、モンナ・ワ゛ンナ]

昭和6年(1931)
 ☆月 *蟻の生活 園信一郎訳 改造文庫 改造社

昭和7年(1932)
 8月 *蟻の生活 園信一郎訳 改造社 [La Vie des fourmis]

昭和9年(1934)
 1月 *青い鳥 飯田敏雄訳注 外語研究社

昭和10年(1935)
 6月 *青い鳥 河合逸二訳 世界文学名著文庫15 文新社
 10月 *貧者の宝 吉江喬松訳 新潮文庫 新潮社

昭和11年(1936)
 5月 *青い鳥附ふらんす昔話集 楠山正雄訳 太陽と草の本1 冨山房 [畑中圭一による]

昭和13年(1938)
 6月 *青い鳥 大木雄二訳 少年少女世界名作物語2 金の星社 (大阪府立国際児童文学館目録による)

昭和14年(1939)
 10月 *マレエヌ姫、闖入者 山内義雄訳 新潮文庫 新潮社 [マレエヌ姫、闖入者]

昭和16年(1941)
 3月 *青い鳥 楠山正雄訳 世界名作家庭文庫12 主婦之友 [畑中圭一による]
 4月 *蜜蜂の生活 岡沢武訳 大東出版社
 5月 *二人の女(『青春の日』) 太田咲太郎訳 ノーベル賞文学叢書10 今日の問題社
     [青春の日(シェンキエヴィッチ著、加納作次郎訳)、二人の女〔アグラヴェイヌとセリセット〕(メーテルリンク著、
太田咲太郎訳)]

昭和17年(1942)
 12月 *蜜蜂の生活 平野威馬雄訳 鶴書房



トップへ 戻る